04 意味の3つの次元と基本ゼマンティク

3節までに述べてきたのは「分化形態の変化と複雑性の増大が、人間の生きている意味世界を変容させる」(p.28) ということ。この説では、「意味」を3つの次元へと分解することで、このテーゼを変更する。

※Grundsematik という語に、4節(p. 28)では「基礎的ゼマンティク」、5節では「基本ゼマンティク」という別の訳語があてられているために、4節と5節で同じこと──意味の三次元に対応するゼマンティク──を指していることがわからなくなってしまっている。


■この節の課題: 「なぜ本書の課題にとって、「階層化した全体社会システムにおける、上流階層の階層分化と相互行為の諸条件をより詳しく調べること」が重要なのか」という理由の提示。

  • p.29
  • 複雑性はシステムを選択圧力にさらす
  • 意味は選択性を組織する

というのが正しければ、進化過程で変化する複雑性は、個々の意味次元においてゼマンティク上の相関物を生み出す、と推測せざるを得ない。選択圧力は、いわば社会的に利用可能なあらゆる意味について、意味の諸次元に押し付けられる。[p. 29]

  • p.29-30 「構造的な社会発展のゼマンティク上の相関物」の例: ギリシアのポリスの発展における「時間と真理の乖離」、「ピュシスとノモスの乖離」
  • p. 31 予備問題:

 増大する複雑性と増大する選択圧力は、個々の次元に対してそのつど何を意味するのか。

いいかえれば、偶発的な選択性は 事物的・時間的・社会的観点からどのように表現され、より複雑になっていく社会における日常生活にどのように示されうるのか。

この問題をより厳密に規定できれば、経験的検証の可能性を考えた理論装置の精密化がさらに進むだろう。

よく注意してみると、そこで問題となるのは、
  • いかにして行動選択を容易にできるのか、さらには、
  • いかにして高度な偶発性があるにもかかわらず意思決定を根拠付けられるのか
という問いではない。

問題となるのは、

  • いかにして選択性はそもそも経験され・構造化されうるのか

という予備的な問いである。[p. 31]


■旧ヨーロッパのゼマンティク【引用p.33】

旧ヨーロッパの伝統に備わっていたのは、

  • 完全で中心に集中する形態としての世界の観念
  • まったく創造性がないわけではないが、実質的には既存の変異可能性を実現するだけの未来の観念
  • 自然だが堕落していて、整然とした自己言及も混乱した自己言及も認める慣習の法典

である。これらは、もとの分化形態を放棄することなく、都市から帝国へ、政治から宗教へと拡大することのできた、貴族社会のゼマンティク的成果だった。

こうしたゼマンティク的伝統の崩壊が、前節に謂う「文化装置の全面転換」のことだと思われる。


■p.33 術語「限定性」の導入