III

288-289

  • ローマ市民法が、概念を事案に、事案を概念へと同調させる、より複雑な法の発展へと一歩を踏み出す時には、ある種の法概念が同時に生じている。これは決して偶然のことではない。その概念とは、法システムと経済システムとの構造的カップリングに好都合なそれ、すなわち所有と契約である。
    • 生活上重要なあらゆる資産(女性と子供、奴隷と家畜、家と土地)が《家産(familia)》という概念のもとでとりまとめられている限りは、所有という特別な概念は必要とされなかった(59)。そして長い間にわたって、所有を占有として把握するだけで十分だったのである。
    • すなわち所有とは、自分のものを支配しているということであり、したがって必要なのは、介入から守ることである…、と。
  • 所有と占有とが決定的に区別されるようになったのは、かなり後のことだった。その時に初めて、目に見えるかたちでの占有関係を超えて、純粋に法的な構成がなされるようになったのである。かくして前者も、それ固有の方法で保護されるものとなった。
  • ここに至って初めて、純粋に事実的な占有を保護することを通して、次のことが確認される。法は、法状態…を暴力によって確立する権利を与えるものではない。法は、裁判上の方法のみによって貫徹されるべきである、と。こうして初めて、法律上の権限が、権利保有者自身の強さや闘争能力から独立するに至るのである(60)。
    • そこから初めて、民法と刑法の分離が生じてくる。したがって所有権を、きわめて多様な契約を取り結ぶための準拠点として、特に信用取引のための準拠点として、用いることが可能になるのである。
    • そしてまた今や訴訟において、占有の問題とは独立に、だれが当該物件の所有者なのかを争うこともできるのである。

文献