ブルデュー『実践理性』

新年会用。id:contractio:20110109

Raisons pratiques

Raisons pratiques

Practical Reason: On the Theory of Action

Practical Reason: On the Theory of Action

  • 1 社会空間と象徴空間
  • 2 新しい資本
    • 付論 社会空間と権力の界
  • 3 作品科学のために
    • 付論1 伝記の幻想
    • 付論2 二重の断絶
  • 4 国家精神の担い手たち官僚界の成立と構造
    • 付論 家族の精神
  • 5 無私の行為は可能か?
  • 6 象徴財産の経済学
  • 7 学者的な視点
  • 道徳の逆説根拠
http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=840

索引に「エスノメソドロジー」が7回登場する。内訳は:

  • 1章「社会空間」に1つ(032)
  • 4章「国家精神」に1つ(151)
  • 4章付論「家族の精神」に5つ(164-5、167、169、175、177-8)


 とはいうものの、この本でもっとも「エスノメソドロジスト」について語られている4章付論でブルデューが たった一つ「例」として挙げているのは、グブリアム&ホルスタイン家族とは何か―その言説と現実』なのであった。
 ただしここは訳文が理解できないのだが。注(1):

(1) ここでは、エスノメソドロジーが疑義を呈するに適した例だけを引いておく。J.F.Gubrium et James A. Holstein, [...].

誰が誰に「疑義を呈する」のだろうか。
 Google書籍に英訳があったので拾っておくと:

I will cite just one work exemplary in its audacious application of ethnomethodological doubt: [...] (p.73)

http://books.google.co.jp/books?id=2xFbVv-EHf4C

 原著も発見した:

Je citerai ici un seul ouvrage, exemplaire par l'intrepidite avec laquelle il met en oeuvre le doute ethnomethodologique: [...] (p.135)

http://books.google.co.jp/books?id=liuzAAAAIAAJ&dq=editions:ISBN2020300265
注が付された本文の趣旨は「エスノメソドロジストは 今日のアメリカにおける「家族」を(構築された)フィクションだと見なしている」(大意)なので、注の趣旨は「そのように「家族」のリアリティを「エスノメソドロジー的に」疑っている例として、グブリアム&ホルスタインの本を挙げておく」といったところになるのだろうか。(→エスノメソドロジストが「家族」のリアリティに疑義を呈する)
この推察が正しければ、上に書いたこと──ブルデューは、グブリアム&ホルスタインエスノメソドロジストである(か、あるいは少なくとも彼らの仕事が「EMの応用」だと見なせる*)と考えている──は間違っていなさそうであるが。
* ひょっとしたら本人たちも、少しはそう考えているかもしれないので、それだけなら「むちゃくちゃにヘン」ではないかもしれない。けど、グブホルをあげてEMの批判までをしてしまうのは、やはり無茶でありましょう。