日曜社会学>社会学的告知>(04/06/12)第6回メディアとことば研究会

第6回メディアとことば研究会

  • 場所: 東洋大学関西大学
  • 日時: 2004年6月12日(土)午後3−6時
  • 利用会場:
  • 発表者
    • 東京会場 高橋圭子(東京大学大学院生)
      「メディア・テクストの批判的分析:NHK『クローズアップ現代』の〈物語〉」
    • 大阪会場 森山由紀子(同志社女子大学
      「少年誌に見られる商品購入意欲促進のための言語表現:メディアミックス戦略の展開との関わりを探る」



要旨追記:

<東京会場>
発表者:  高橋 圭子(東京大学大学院生)

  • タイトル: メディア・テクストの批判的分析:NHK『クローズアップ現代』の〈物語〉
    • キーワード: メディア・テクスト、批判的談話分析(CDA)、物語、「私たち」
  • 概要: 周知の通り、メディアは〈現実〉を編集・再構成し〈物語〉として提示する。一方、メディアに対する〈公正・中立・客観性〉の期待・要求も依然根強い。このジレンマは、公共放送の大義を任ずるNHKの〈ニュース・報道〉の分野で特に大きいようである。本発表では、「長寿硬派番組」として定評ある『クローズアップ現代』を批判的に分析し、このテクストの〈物語〉を探ることを試みる。具体的には、2003年9月29 日放映のNo.1806「援助大国日本/ODAはどこへ」を例に取り上げる。 まず、言語記号について、ニュース・ストーリーの構造分析の枠組みを援用し、「ODA大綱が見直された」という〈出来事〉が、「援助は複雑で難しい」という〈評価〉とともに、「私たち=援助する側=日本」という〈立場〉から語られていることを明らかにする。また、インタビューにおけるインタラクションの分析から、「甲という長所はあるが、乙という短所の指摘についてどう考えるか」という定型化された質問、頻繁な頷き、終助詞「ね」「よね」の多用等によって果たされるイデオロギー的効力を考える。そして、映像・音声記号については、その指標性と規範的・優等生的コードが視聴者との間に〈連帯感〉と〈正当性〉をもたらしていることを分析する。 本発表では、以上のような手続きにより、このテクストが「援助は複雑で難しいが、それについて一生懸命考えている〈私たち〉」という〈物語〉であることを論じたい。なお、同じくODAの問題を扱った他の番組(テレビ朝日系『ニュースステーション』など)も同様の方法で分析し、議論を強化したいと考えている。

<大阪会場>

  • 発表者:  森山由紀子(同志社女子大学
  • タイトル: 少年誌に見られる商品購入意欲促進のための言語表現:メディアミックス戦略の展開との関わりを探る
  • 概要: 現在発行されている月刊少年誌の中で発行部数一位を占める『コロコロコミック』は、一見コミック誌の体裁をとりながら、誌面の中に子供向け商品の情報を大量に盛り込んだ、一種のカタログ誌、商品情報誌としての側面を持ち、子どもたちの情報源として大きな役割を果たしている。この雑誌は、いわゆるメディアミックスによる子供向けの市場開拓を担っている雑誌でもあり、雑誌の中のコミックそのものが、映画・テレビ番組・ゲーム・プラモデル等の玩具、その他商品と密接に連動している。本発表では、現在のコロコロコミックのグラビアページその他、情報誌的側面を担っている誌面に、命令口調や、価値観を限定する表現、むやみに急がせる表現が数多く用いられていることに対する問題意識を出発点として、コロコロコミックにおけるキャッチコピーの変遷を調査し、メディアミックス戦略の展開の歴史、子どもをめぐる社会状況の変化、雑誌の果たす役割の変化との関連性を探る。また、誌面にもりこまれた広告表現と、独立した広告の表現とに違いについても言及したい。