昼食後半。『啓蒙2』再読。
社会システムと時間論―社会学的啓蒙 ニクラス・ルーマン論文集3 (ニクラス・ルーマン論文集 3)
- 作者: ニクラス・ルーマン
- 出版社/メーカー: 新泉社
- 発売日: 1986/07/01
- メディア: 単行本
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内容概略メモ。
- I 隣接諸分野における「複雑性」概念使用例を瞥見したあと、それが、旧いヨーロッパの思考財における「多様ナモノノ統一」の後継者の位置にあることが確認される。
→このことが、「複雑性」概念と、「様相」や「同時性」といった論点との関わりを考える際の出発点となる。(ただし、この論文で詳しく論じられているわけではない。)- II まずは〈要素/関係〉-区別を手がかりとして、「複雑性」概念の規定が開始される。
- III 「II」で得られた暫定的な規定が──再度──、旧いヨーロッパの思考財(ここではヘーゲル論理学における「限度」概念)と対照される。
ちなみに、『小論理学』「存在」論の見出し[A質|B 量|C 限度]の3番目。
「限度」も「複雑性」も、質と量を併せ持った概念だから という理由で、ここで比較されているわけですな。- IV 「II」での比較を手がかりにして、翻って今度は「要素」概念のほうが検討される。そしてそこから議論は 「複雑性」とシステム準拠の関わりのほうへ。
- V この論文のハイライト: I〜III における考察が、〈システム/環境〉-区別に差し戻される。
- VI 付論: 〈システム/環境〉-区別と相関的に考察された場合、複雑性概念は、その概念上の構造からみて、かつて「合理性」と呼ばれたものと同等であることが確認される。
したがって、「複雑性」概念は、かつて「合理性」と呼ばれたものの吟味検討に用いることができることになる。
(→このことが「社会学的啓蒙」というプログラムを与える。)
VI での、ハバーマスに対する切り返し方がちょっと面白い。
「複雑性概念は、かつて「合理性」と呼ばれたものの後継者である」という物言いに対しては、ハバーマスならば「そんなものは【技術的合理性*】にすぎない」と言うだろう。
そしてそのように批判する際には、ハバーマスは「技術的合理性」についてよくわかっているつもりでいるわけだ。しかし、ハバーマスのやり方では、そもそも「技術的合理性」がどんなものであるのかということ自体が検討できない筈だ(以上大意)
‥‥云々、と。
ごもっとも。
* これは通常、「ある条件に鑑みて、手段と目的を最適な仕方で組み合わせること」といったことだと解されている。ルーマンにしてみれば、この「手段と目的を最適な仕方で組み合わせる」というこの表象自体に、すでに謎がたくさんあるのだ、ということになる。ここでルーマンが参照を求めているのは もちろん『目的概念とシステム合理性』[1968]。
目的概念とシステム合理性―社会システムにおける目的の機能について
- 作者: 馬場靖雄,上村隆広,ニクラス・ルーマン,Niklas Luhmann
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 1990/10
- メディア: 単行本
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【追記】
ヘーゲル小論理学の目次を発見: