ルーマン「単純な社会システム」2節6

[0206]再帰的知覚と言語的コミュニケーションの分化/相互作用の撹乱され易さ

だから一定の範囲で、主題の制御のために、またそれどころか主題によるシステムの制御のために、知覚作用が再び利用されなくてはならなくなる。詳しく言うならば、コミュニケーション過程に直接関係している聴取作用だけではなく、種々雑多あらゆる種類にわたる観察があてられなくてはならない。こうした事態から発話過程は、知覚過程からの不完全な分化として把握される。 [SS:04-239]
[SS:10-753]
発話は、思念とコミュニケーションという伝達としてまたシステム操舵として、同時に作用しているレベルを前提にしている。そこでは否定作用を自由に利用できず、印象や気分などを、ほんの例外的にはっきりと主題化することによってしか、質問の形式や否定できる意味の表われる形式にもたらすことができない。これも単純なシステムの「構造の弱さ」の一面である。システムは、それ自身の展開を決めていく過程のほんの一部しか、否定できる主題構造の形式にもたらすことができないのである。そしてこの形式は、言語より速く進行する知覚過程により運ばれ、渡される。だが、たしかに時間的には優れているものの、選択度の乏しさと社会的合意の困難という代価を払わなくてはならない。 [SS:10-754]