ルーマン「単純な社会システム」2節7

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 社会システムは、こうした仕方で拡散した知覚による接触と言葉によるコミュニケーションとに同時に関係している。つまり体験処理の二つの分化可能な(たとえば十分には分離しえないにしても)過程を同時に利用することで、特定の構造からなる予防装置を用いて参与者の同時的現存性を放棄した、より大きくより複雑な社会システムとは、はっきりと区別される。そうであるにもかかわらず「存続」しえるのである。  
単純なシステムの特殊性は、一種の「分業」を行ないながらどんどん問題を転移することが可能であるという、二元的な基本過程にある。
たしかにほとんど発言(例えば学問上の議論)をつうじてだけ調整されるか、あるいはほとんど知覚(例えばサッカー)をつうじてだけ調整されるというふうな極端な事例はある。だがこうした場合には専門家能力が必要となる。
 
一般に単純なシステムでは、この二つの様式の過程を自由に利用できるところにその強みがある。しかし、この型のシステムを選択することには、とりわけシステムの作用とシステムの複雑性の増大する可能性について、はっきりとした限界があるのである。