涜書:ドミニク・ルクール『科学哲学』

昼食。読了。

科学哲学 (文庫クセジュ)

科学哲学 (文庫クセジュ)

 主に論理実証主義〜新科学哲学を中心とするブックガイド的レジュメ。
 出版社による紹介文は

ウィーン学団バシュラールを経てクワインやハッキングへと至る科学哲学は、サイエンスの目的と方法をめぐる探求である。本書は、学説史を詳しく解説しながら、ヨーロッパや英米の伝統が合流する将来を展望してゆく。フランス科学哲学界を代表するルクールによる、わかりやすい入門書。

となってるけど、新書にこれだけのネタ詰めこんで「学説史を詳しく解説」もないもんだ。入門者向けブックガイドですよ。



 おふら〜んす な本らしく──例によって──バシュラールとカンギレームに(全体のバランスから見れば)けっこうな紙幅があてられていること

と、ネルソン・グッドマンに一章(といっても数ページだが)割かれている

あたりがすこし目を引くところ。
 墺〜英米系 と おふらんす系 の対比が著者の狙いなのだろうが、最終章で 新しい科学哲学の動向 を紹介しつつ──とりあげられるのはハッキングとパットナム──、「実はそんなことは既に1930年代にバシュラールが言っていたわけだが」(大意)をオチに本を閉めるあたりでお里が知れる、というところ。ま た お 国 自 慢 で す か*。

* 笑かしていただきましたが。 これはこれで、バシュラール──そしてそれ以前──にまで遡る 由緒正しき伝統芸ではございますな。



著作最後の段落:

 もし科学哲学が、理論の構造を問いかけたうえで、そこに概念の発生の研究*を結びつけるならば、次のように考えることにはまったく正当な理由があることになる。すなわち、科学哲学が、人文科学と社会科学という科目がもつ対象と手続の特殊性を確証することに貢献する、と。そして人文科学と社会科学の特殊性は、生命科学がみずからの特殊性を主張しはじめたときと同様に、しっかりと確証されることになるだろう。おそらく近い将来、生物学的な哲学のいとことして、経済学的な哲学や社会学的な哲学が、その形を取りはじめるのを人びとは目にすることになるかもしれない。それらの哲学は、社会生活だけが持つ独特の極性**や緊張を考慮に入れ、それらの特性を相殺してしまうことを避けるだろう。専門家は、そこに知的冒険への好奇心をかき立てられ、人びとは好んで議論に加わり、再びそこで自由の感情を味わうことになるだろう。[p.160]

この結論に強い異論があるわけではないけれど、どこをどうするとこういう主張が出てくるのか ってのが、この本には書いてない。

* バシュラール→カンギレームを念頭においた発言でありましょう。
** 極性?(゚Д゚)ハァ?


【追記】050826 00:00
八雲さんとこに目次が: