良書ではないでしょうか。

- 作者: 松田茂樹
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2008/01/17
- メディア: 単行本
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先行研究によって提出された4つの仮説(+著者の仮説):
第3章「父親の育児参加はなぜ少ないか」のp.42-43から適当に構成
なにが夫の家事・育児参加の程度を決めているか
- 家事・育児の量仮説 [「必要だからやる」説]
- 幼い子どもがいることや子ども数が多い(あるいは/加えて、なんらかの[保護者にとっての]リスクファクターがある)と、親が行うべき家事・育児の量は増える。
- 量が多いほど、夫の家事・育児参加は増える。
- 時間的余裕仮説 [「時間があるからやる」説]
- 家事・育児についやす時間的余裕があれば、家事・育児を行うことも多くなる。
- 時間的余裕を制約する大きな要因は労働時間であり、労働時間が長ければ 家事・育児参加は少なくなる。
- 相対的資源仮説 [「力関係が弱いからやる」説]
- 家庭内における夫婦の家事・育児分担は、家庭外で男女が獲得した資源の差を反映して決まる。
- 家事・育児労働は男女とも避けたい労働であるため、双方ともできるだけ自分の分担を減らそうとする動機を持っている。
- このため、収入・教育等の資源を多く保有している者は、夫婦における家事・育児分担の交渉で優位に立ち、それらの責任を回避することができる。
- 夫のほうが妻よりも収入や学歴が高い場合、夫が家事・育児を行うことは少なくなる。
- 性別役割分業意識仮説 [「規範としてやるべきだからやる」説]
- 「夫は仕事/妻は家庭」という性別役割分業に肯定的であれば、夫の家事・育児参加は少なくなる。
- ネットワークの代替仮説 [「他にやる人がいないからやる」説]
- 同居の親族の有無や世帯外のネットワークが豊富にあれば、父親が育児参加する必要性が低下するため、その参加の程度も低くなる。
これらをインタビュー&質問紙調査とネットワーク理論をつかって検討していきますよ、という章。
著者、すぐあとに続けて曰く:
米国の実証研究では、結果は必ずしも一致してはいないが、4つの仮説をそれぞれ支持する結果が出されている。またこの中では、特に、時間的余裕仮説がもっとも夫婦の家事・育児分担を説明する力が大きいといわれる(Shelton and John 1996)。
松田『何が育児を支えるのか』p.43
近年、日本でもこれらの仮説を用いた実証研究が行われはじめている。先行研究間の調査対象者、調査項目、分析手法の違いなどから、分析結果が示すところは一致していないものもあるが、総じて家事・育児の量仮説や父母の時間的余裕仮説を支持する結果が多い。相対的資源仮説や性別役割分業意識仮説を支持する結果は少ない。
で、すぐあとの節で、「労働時間11時間*」が 父親の育児参加度の分岐点になっているようだ、という著者の調査結果が紹介されています。[p.46-47]
* 午前8時に家を出た場合、午後8時までに帰宅できるかどうか。