偉い先生の回顧録。
- 1 情況と新たな展開
- 〈知〉のライフサイクルの短縮化
- 〈知拡〉と細分化・専門化の進行
- 状況と動向
- フロンティアの拡大と統合
- 一般理論への憧憬からの脱出
- 2 統合に向けてのさまざまな試み
- 「統合科学」への動機と系譜
- 専門化の壁──統合化への裏の動因
- ミラーの壮大な一般生命システム論の構想
- ベレルソンらによる人間行動のカタログ化
- トンプソンらの試み
- 南の『人間行動学』の試み
- 脱出の方略
- 作者: 犬田充
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2001/05
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 3 ミラーとベレルソン
- A ベレルソンらの構想
- 「文化」に深くはまりこんだ人間行動
- 変化が常態化した社会の諸問題
- 社会制度での諸知見
- コミュニケーションのつくる世界
- 行動科学的人間イメージの限界
- B ミラーらの構想
- 行動科学の第二世代への移行
- 選択と戦略
- 生命システム論の特質
- 一般理論のありうべき寄与と無意味さ
- 4 行動科学への批判と特質
- 「埋没」した行動科学
- かずかずの批判
- 人間「操作」への恐れ
- 行動科学の特質
- 〈統合化〉への多様な基準
- 関心の多様化・細分化の進行
4 行動科学への批判と特質
p. 79
(6) 「行動」にウェイトをおくのはアメリカの社会諸科学に以前からある特徴である。すでに1910年代のはじめにシカゴ大学の心理学者エンジェル, J.R. は、将来心理学では「心mind」のかわりに「行動 behavior」が使われるようになり、そのとき心理学者は「心」理学者ではなく「行動」学者と呼ばれるようになるといったことがあった。エンジェルの弟子であるワトソン, J.B. は、1915年のアメリカ心理学会年次総会での会長演説として「行動主義者から見た心理学」という報告を行い、行動を心理学の中心概念にすえ、これがのちにワトソニズムとも呼ばれる行動主義 behaviorism の発端となった。
行動科学も「行動」を中心概念にすえているが、その内容はワトソニズムと全く同じではない。
p. 70. ベレルソンのあげる「科学的」研究の5つの条件:
- 手続きの公開性: 研究で何が行われたか、どのように行ったかの詳細な記述を含み、他の研究者による追試を許す。
- 定義の精密性:
- データ収集方法の客観性: データを得る上でバイアスがない。
- 諸事実の再現可能性: 他の研究者が同じ条件のもとで再現でき、事実の検証ができる。
- 組織的・集積的な接近法: 少数の中心的な概念によって知識の全体を統合し、理論を樹立しようとする。
文献
- 吉村融(1968)「二十世紀人間論の成立条件」、『岩波講座哲学 3人間の哲学』 ISBN:B000JBFTG0