いただきもの:小谷英生(2018)「ゴットフリード・アヘンヴァルの自然法論とStatistik」

  • 小谷英生(2018)「ゴットフリード・アヘンヴァルの自然法論とStatistik―― 自然法論と歴史叙述の関係をめぐって――」、日本哲学会(神戸大学、2018年5月18日)
  • 0. はじめに
  • 1. 問題の所在
    • 1-1. 自然法論と歴史叙述の補完関係一般について
    • 1-2. 観念論的人類史
    • 1-3. アッヘンヴァルの方へ
  • 2. アッヘンヴァル『自然法の基礎』の基本的立場
    • 2-1. 『自然法の基礎』の性格
    • 2-2. 哲学的前提、とりわけ完全性について
    • 2-3. 自然法原理すなわち他者保存原則の導出
    • 2-4. 小括
  • 3. Statistik と歴史叙述のモーメント
    • 3-1. 国家学としての Statistik
    • 3-2. Satistik の父?
    • 3-3. Statistik と「注目すべきもの」、そして歴史叙述
  • 4. おわりに──アッヘンヴァルから観念論的人類史へ
  • 付録1:アッヘンヴァルの学問的キャリアについて(覚書、著作省略)
  • 付録2:『自然法の基礎』目次


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Statistik についてはすでに膨大な量の書物があること、これは同時代人にとっても周知の事実であった。「Statistik の父」と名づけたシュレーツァーその人でさえ、先駆者としてコンリング、オルデンブルガー、ボーゼ、ベックマンといった名前を挙げているのである。シュレーツァーがアッヘンヴァルに見たのは、むしろ方法論上の革新にあった。

Statistik は名前においても事柄においてまったく新しい学問である。統治〔学〕、歴史〔学〕、旅行記などが登場して以来、その素材はすでに部分的に存在していた。しかしばらばらの素材に科学的形式(eine scientive Form)を与え、異種の、しかし与えられた目的にとっては不可欠のデータの集積
をひとつの観点から統合し、このデータを閉じた体系の内へともたらし、それによってこの学問を崇
高な統治の学にとっての重要な補佐役とすること、このことを最初に始めたのは私の師アッヘンヴァルであった。(Schlözer, 1804, S. 1f.)