伊藤 守(2017)『情動の社会学 ―ポストメディア時代における“ミクロ知覚"の探求―』


情動の社会学 ―ポストメディア時代における“ミクロ知覚

情動の社会学 ―ポストメディア時代における“ミクロ知覚"の探求―

青土社

  • 序章――情動化する社会を読み解くために

第1部

  • 第1章 デジタルメディア時代における言論空間――理論的探求の対象としての制御、情動、時間
  • 第2章 「事態の潜勢態」をめぐって――ホワイトヘッドの「抱握」概念から
  • 第3章 知的感受と情動の強度――「感受」の公共的性格
  • 第4章 情動と社会秩序の宙づり――ホワイトヘッドとパースの社会学的射程
  • 第5章 情動の政治――フクシマ、領土、オリンピック

第2部

  • 第6章 社会の地すべり的な転位――コミュニケーション地平の変容と政治的情動
  • 第7章 ポストメディア時代のコミュニケーション・モード――SNSは何を変えつつあるのか?
  • 第8章 オーディエンス概念からの離陸――群衆、マルチチュード、移動経験の理論に向けて
  • 終章――ポストメディア時代の行方と展望
  • あとがき

序章「情動化する社会を読み解くために」

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パースの記号論を … 「論理的解釈項」とともに「情動的解釈項」「力動的解釈項」からなる記号の動的作用の総体から、対象世界と身体の根源的な関わりのうちに生成する情動の問題を考究する。これが本書の一貫した問題関心である。

第1部 第1章「デジタルメディア時代における言論空間──理論的探求の対象としての制御、情動、時間」

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以下では、サイバネティクスを基盤とした情報のフィードバックを通して、自然環境、社会環境、さらには人間の精神や身体をこの回路に取り込むまでに進化した制御システムが、社会的コミュニケーションのモードと言論空間の外形的構成そのものを組み替えているとの仮説を展開するだろう。次に、この言論空間の基盤をなす情報流通の物質的・社会的な機構の変化がもたらす、効果ないし影響を考えるためには、メディア研究が対象とする領域を、意識や意識的行為のレベルから、意識化する以前の、下意識の、より正確に言えば「潜在的なもの」と「潜勢力」のレベルにまで拡張する必要があることが論及される。さらに第三に、いま述べた二つのことがらと内的に関連する重要な観点として、「時間」の問題を視野に入れることが不可欠であることが言及されるだろう。それは人間の「経験」を根本的に再考することでもある。

文献