![]() 情動の社会学 ―ポストメディア時代における“ミクロ知覚"の探求―
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序章「情動化する社会を読み解くために」
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パースの記号論を … 「論理的解釈項」とともに「情動的解釈項」「力動的解釈項」からなる記号の動的作用の総体から、対象世界と身体の根源的な関わりのうちに生成する情動の問題を考究する。これが本書の一貫した問題関心である。
第1部 第1章「デジタルメディア時代における言論空間──理論的探求の対象としての制御、情動、時間」
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以下では、サイバネティクスを基盤とした情報のフィードバックを通して、自然環境、社会環境、さらには人間の精神や身体をこの回路に取り込むまでに進化した制御システムが、社会的コミュニケーションのモードと言論空間の外形的構成そのものを組み替えているとの仮説を展開するだろう。次に、この言論空間の基盤をなす情報流通の物質的・社会的な機構の変化がもたらす、効果ないし影響を考えるためには、メディア研究が対象とする領域を、意識や意識的行為のレベルから、意識化する以前の、下意識の、より正確に言えば「潜在的なもの」と「潜勢力」のレベルにまで拡張する必要があることが論及される。さらに第三に、いま述べた二つのことがらと内的に関連する重要な観点として、「時間」の問題を視野に入れることが不可欠であることが言及されるだろう。それは人間の「経験」を根本的に再考することでもある。