(20050423) 社会学的告知>リスクの社会的意味

第45回「科学技術社会論研究会」ワークショップ「リスクの社会的意味」

  • 2005年4月23日(土)10:00-17:50
  • 東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室


1.ワークショップの目的

昨今、「リスク論」「リスクコミュニケーション」はある種のブームとなっている。しかしそのような傾向に対してはある種の危惧がもたれている。それは環境に関するリスクや、GMOのリスクが「科学的なもの」としてのみ理解されて、その社会的・政治的・経済的・文化的な意味が無視されてしまうことに対する危惧である。またリスクを課す者と課される者との非対称、リスクの配分の不平等、さらに社会的・政治的弱者に対する配慮が軽視されてしまうこと、自然的なリスクと人為的なリスクとが同じリスクの名のもとに語られることに対する違和感などもその危惧の原因になっていると思われる。このような問題に関するキーワードの一つとして「予防原則」がある。しかし「予防原則」については、批判的な意見も少なくない。
今回の研究会では、化学物質による汚染を一つの軸にして、リスク概念の社会的意味について考えてみたい。まず環境リスクを国際政治の観点から考えるために、石井敦さんに「外交科学」という観点から問題提起をお願いする。次に廃棄物の問題に関して活発な問題提起を続けている吉田文和さんから戦後四大公害裁判から見たリスクについて問題提起をしていただく。最後に、大竹千代子さんに予防原則の概念について改めて紹介していただく。また全体討論では、ナノテクノロジーの「リスク」等にまで視野を広げて、「リスク」論の社会的な意味について再考してみたい。リスクのポリティックスに関する議論は始まったばかりであるように言われることも多いが、公害や化学物質汚染については長い議論の蓄積がある。今回の研究会はそういった議論の蓄積をもとにして、「リスクは少ない、だから安心するのが当然なのだ」と言うがための「リスク論」に対して批判的な視点を確保するための一つの試みとしたい。

2.ワークショップの内容