11章8節

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第4章8節への指示:

以上述べてきたことをすべて背景として、もう一度、コミュニケーションが行為として非対称化されるというテーゼを取り上げることにしたい。社会システムは、なによりもまず、コミュニケーション・システムなのである。しかしながら、社会システムは、三つの選択の総合としてのコミュニケーションのなかへ、行為として解された「その」コミュニケーションを一要因として組み込んでおり、そうすることによってその社会システム自体を行為システムとして描写している64。このように社会システムを行為システムとして描写するという社会システムの第一次的な自己描写は、それ以外のあらゆる自己描写の

  • たとえば非コミュニケーション的行為を社会システムの一部とみなすことの、
  • また 行為の 以前/以後という図式によって、社会システムとその環境との関係を時間化すること*の

前提である。そうしてみると、社会システムにおける非対称化の 時間的/事象的/社会的な前提条件のすべては、同時に社会システムがみずからを行為システムとして自己描写するさいの前提条件なのである

すでに示唆したとおり、これらの前提条件は、歴史とともに変化しており、ましてや行為それ自体についての解釈は、社会構造の進化的変動につれて歴史的に変化していると想定しなければならない。力学で捉えられた非対称性を拠り所として行為に関する「物理学的」解釈をおこなうという提案は、行為がじっさいにそのようたものとして理解されていたということのある程度の根拠となっている。こうした提案をすることによって、十七世紀/十八世紀は、社会の変化しつつある諸事態に反応したのである。

* こちらが5章で〈入力/出力〉図式と関係づけて論じられているネタ。