八章「進化」VI 文字と印刷

「プロジェクト」

pp.645-646

 科学に固有のテクスト生産については、これまでほとんど顧みられてこなかったもう一つの印刷の副次効果が重要である。それは、書物や論文の出版という目的を持った、プロジェクト形式による研究の区切りの可能性、複雑で完了できない研究過程における期間設定である93。テクストを印刷のために準備することは、諸科学の究極目的(telos)に縛られない代替的目的論のチャンス、つまり任意の内容を受け入れる目的のプログラム化を提供する。このプログラム化によって、(同じ手続きであらためて出版しないことには)もはや変更できない研究を完成させ、到達した研究過程の区切りから充足感と他の研究を行う自由を引き出すことが可能になる。さらに、テクストを生み出す研究は、さきに94すでに検討された産出と提示の差異を制御するために、その差異自体を産出するために、利用することができる。科学社会学の研究では、これは「不確実性のマネジメント」、つまり不確実性を確実なものとして定式化される認識段階に転換することとしても記述されている95