基本的法概念の未開法研究への適用:ホーフェルド(その2)

「ホーフェルド図式の法人類学にとっての御利益」について論じているホーベル本第4章「基本的法概念の未開法研究への応用」の続き:http://d.hatena.ne.jp/contractio/20040505#1083694970
大きな論点(=効用の例)は二つあった。

  • 10:「未開社会では法と慣習が一つだ」という幻想が吹き飛ばされる [p.55]
  • 20:<私的/共産的>(<無体/有体>)という区別にまつわる議論をクリアにできる [p.56〜]

「所有権」を巡る「20」の議論のほうに圧倒的な分量が割かれていて、下記のような連続したサブトピックが扱われる。

    • 21:「財産」について
    • 22:「相続」について
    • 23:「無体財産」について



まずは──短い──「10」のほうからみていく。図を再掲:

ホーフェルド図式(ホーベル改訂版)
    人A   人B  
 積極的関係  I 要求権 demand right ←→ 義務 duty 裁判所その他法律上の有権機関の
強制的権威に従う命令的関係
II 特権的権利 privilege right ←→ 無要求権 no demand right
 消極的関係  III 権限 power ←→ 責務 liability それだけでは直接に法的手段により
執行される事がない
IV 免責 immunity ←→ 無権限 no power

040509 まちがってました:→修正版

「10」は短い。一段落だけなので、まず全文を引用してしまう。

[01] みぎの[受動的=消極的法律関係は「法でないもの」の宣告である、という]事情を認識することが、未開法研究ではとくに重要である。なぜなら、それによって、未開社会では法と慣習が一つだという幻想が吹きとばされるだろうからである。

  • [02] 現代西欧の法制度は、AのBに対する要求権は、Bの義務履行を裁判所が命ずるという 裁判所に対する要求権が同時にともなうことにより、保障されている。
  • [03] 未開社会でも、Aが法的権利を他人により侵害された時に、裁判所があってこれに要求権を持つこともあるが、これはある程度体系的な公法が存在する場合で、むしろ通常の場合は、裁判所も法執行の専門機関も制度的には存在しない。その結果として、不服を持つ本人自身かその親族の者が当人の要求権を執行しなければならぬことになる。その者たちが、社会的に承認され一般的に容認されている方式でこれを執行するときは、所定の法的サンクションを適用する特権的権利を持つことになる。

[04] ただしその間にいちじるしい相違がある。

  • [05] 現代の方式では、一方当事者は、その相手が要求権に応じないときには、裁判所や法執行機関が履行を命じ損害を賠償させあるいは制裁を課するよう、それら諸機関に求める一連の要求権を別に持つことになる。
  • [06] これに対し未開私法の方式では、相手方が要求権に応じないときには、不服な一方当事者とその親族は、所定のきまりに従い履行を強制し損害を賠償させあるいは制裁を課する特権的権利を持つことになるのである。

絵にしてみるとこんな感じか。

    • 【ステップ1】:事件です。
    • 【ステップ2】:裁判所の有る無しで左右にわかれます。
    • 【ステップ3】:裁判所が無いとたいへんです。



(- ∀ -)スゥスゥスゥ.........   ( ゜д゜)ハッ!


‥‥‥で、何がわかったことになるの?

私は、「未開社会でも法と慣習は一体ではない」ということを、どのへんから理解すればよいのでしょう...。
R1とR2については記載されてないな.......。R3&R4の関係はどう呼ぶんでしょう。 Pも「要求権」?