涜書:坂部他編『九鬼周造の世界』

九鬼の『偶然性の問題』は、命題論理学の枠組みの中でおこなわれている。

〜命題論理学の様相体系に「形而上学的」解釈をほどこしたもの。
たとえば「偶然の3分類」も、すべて命題論理学のジャーゴンを使って提示されているし、それだけでなくそもそも、その分類の根拠自体が 命題論理学に依拠・由来している。

そこに決定的な「時代的制約」があるのに、

したがって 今日『偶然性の問題』を読み直すなら、その枠組みを取っ払った上で再解釈を施す という作業が前提として必要となるはずなのだが、

寄稿者の誰もそのことをまるで気にしていないご様子。2002年にそんな本をだしちゃうって、素人目に見て(も)ほとんどスキャンダラスなことのように思われるのだが、「日本哲学・思想史」業界的には そうでもない、ということなのだろうか。不思議。

あるいは「時代的制約」もいっしょに継承されている、ということ? それなら納得。


おぉ。いまは別の版でも出ているのですね。

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追記
以上のコメントは間違いでした。
岩田文昭「九鬼とフランス哲学」章で、偶然性の捉え方に関するベルクソンやブートルーと九鬼の違い、という非常に重要な論点で触れられていた(183頁)。