日本語版への序文(1984)

ii-iii
  • 肯定的なサンクションに基づく広い権力概念は、制限にかかわるという点で否定的なものである。
  • 否定的なサンクションに基づく狭い権力概念は、動機づけの新しい可能性を作り出すという点で肯定的なものである。
vi-vii

理論的抽象の本質は、具体的なメルクマールをはぎとり、無規定性を高めることで、概念の一般化をはかることにあるのではない。そもそも、一般概念とより具体的な事態との間になんらかの一次元的な関係があると想定することは、科学的な研究や科学の発達の典型的な諸形態とは相容れないのであって、むしろそのような表象は、前科学的な思考の特色である。科学的な理論が実現を目指さなければならないのは、抽象と具体が互いに他を高めあうような連関、抽象と具体の相互亢進的な連関である。だから、ここでの抽象は、内容の空疎化をこととするような抽象であってはならず、異質的な諸現実への接近と この諸現実のコントロールを可能にする抽象でなければなら境界を限定した精確な作業概念を選びとろうとする場合には、したがってまた、これら諸概念の理論的な文脈について一層多くの注意を払う必要があるのである。 … 現実の特定の諸断面を それぞれ適切につかみとるための特殊な諸概念は、だから同時に、他の諸概念と接続することのできる概念でなければならず、これらの概念は、抽象を経て獲得される認識が他の諸分野でも実りをもたらすことができるように、あらかじめ配慮したものでなければならないのである。

あいかわらず、序文ではいいこと言うルーマン先生。

viii-ix
  • 権力: その人の指示だという理由だけでその指示が遵守される。
  • 貨幣: それ自体は使用価値のない交換手段で支払いをするという理由だけで、希少な財貨を入手することができる。
  • 真理: 直接的な知覚から遠く隔たっている認識が、知識として・引き続く研究の基礎として他人に受け入れられていく。
  • 恋愛: ほかに多くの人がおり、ほかの人々に多くを依存しているにもかかわらず、ただ一人の人の意見や行動様式に特別の意義を認めることができる。