第六章 I 複雑性: 科学論における〈基礎づけ/成長〉論争から

  • [04] 複雑性: 「基礎付けの困難」と「成長の指標」がセットになったもの。
  • [07] p.430

 科学システムの重要な装備は、複雑性の構築を蓋然性の高いものにするとともに加速するように準備されている。その装備に当たるのは、

  • テーマ選択と意見発表の個人的自由の制度化
  • 決定の集権化の欠如、つまり決定の回帰的な結びつきへのヘテラルキー的形態
  • 意見の違いや争いに対する高度に制度化された寛容
  • 「期限を切った決定圧力」の欠如、つまり多くの時間

である。これらすべては、まずシステムのシステムの変異能力を高め、理論の統合と首尾一貫した概念の発達のための幅広いチャンスを与える[…]。それと同時に、複雑性を縮減する理論構造は、実現すれば選択とも見られる事、また批判を行う観察者が出現することが、保証される。

  • [10] 複雑性の規定: 〈単純/複雑〉から「要素の結合の選択性=偶発性」へ。
    • 複雑である〜選択が強制されている〜接続可能なものが制限されている〜構造をもつ。接続可能性は構造的選択によって構成されている。
    • [16] 「社会調査」について p.434

経験的な社会研究は、調査道具によって、社会的によく知られた世界をデータに分解し(たとえば、質問紙や面接の回答)、それからそのデータの間の関係を追求する。理論上は、そのような関係は、ある理論によって予測され、しかるのちにその理論を検証もしくは反証すべきであろう。だがじっさいは、こみいった推計手続きがそのような理論にしばしばとってかわる。それから、事後的に推計結果をてがかりにして、どの関係が有意味に解釈されうるか、注目に値するとみなされる統計的有意性の水準はどの低後かが見つけ出される。この手続は、偶然性のあるゲームに似た所があり、研究が腕と運のないまぜでいきつく結果は、さらに研究を続ける気にさせることもあれば、その気をなくさせることもありうる。世界の複雑性は、自己生産されたデータの意外な値のなかに現れるのだが、発表できる結果を引き出すためには、理論よりも生活経験の法が援用されなければならない。したがって、これに対応する方法論が教えるのは、まずシステムの複雑性の劣位を、自己生産された複雑性によって補うことであり、つぎに、自己生成されたデータの世界のなかで無数の組み合わせの可能性を除外して、成果を追求することである。

  • [20] 真理の「整合説」の由来: →第8章「進化」VIII p.651 へ