フォード財団のリスタートの方向を示したゲイザー報告についてそこそこ詳しく書かれている。
この報告書──Report of the Study for the Ford Foundation on Policy and Program──は、現在でもフォード財団のWEB頁に掲載されている。財団にとって そのくらい重要な基本方針なのであろう。
これを読むと、「行動科学」なるものは、なんと教育放送への野心の落とし子であったらしいことが分かる。
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3. フォード財団の成立と教育放送への関与
(2) 財団の時代
連邦政府が教育や福祉へ連邦資金を投入する以前の20世紀の初頭から1960年にかけてをマクドナルドは「篤志財団の黄金時代(the golden heroic age)」と呼んでいる。その理由として、福祉や教育・研究における篤志財団の貢献が際立った時代であるとする。
たとえば、ロックフェラー財団は3500万ドルを投じて小さなパブティスト系大学であったシカゴ大学をビックテンと呼ばれる大学へ育てあげた。またカーネギー財団は1902年にワシントンDCにカーネギー科学研究所を設立しアメリカの科学の発展に貢献した。また、カーネギー財団の大学教員のための年金設立への貢献はアメリカ大学史上よく知られた事実である。一方フォード財団の課題は「黄金時代」のロックフェラー、カーネギー両財団と異なり、市民の自由思想の確立と教育(liberty and discipline)であった。 [p.4]
4. フォード財団の政策決定
(1) ゲイザー報告と2つの基金
- 1936年、フォード財団設立
- 1947年、ヘンリー・フォード死去による基金により全米第一の財団に。
- 1950年、ゲイザーを委員長とする研究委員会による「フォード財団の政策と計画に関する研究報告書」(ゲイザー報告)が提出される。
- 評議会はこれを承認し、「教育テレビ・ラジオの教育における可能性の研究」への支援を決定。次の5つの領域での活動を強めることとした [pp.5-6]:
- 世界平和と、法と秩序と正義の確立への貢献 (平和と法と秩序の確立)
- 変化しつつある社会の諸問題を解決する上で、自由と民主主義の基本原則へ忠実に準拠すること (民主主義の強化)
- あらゆる場所での人々の経済的条件の向上と、民主主義の目標達成のための経済的制度の改善 (経済の発展)
- 個人の知的、倫理的、市民としての可能性を開発するための教育的環境や方法を強め、拡充し、改善すること。知識や文化を保存し、増大させること。(教育の革新と充実、文化の発展)
- 個人の行動と人間関係についての知識の開発 (行動科学の研究)
この報告書は以後フォード財団の経営方針となった。この中で、フォード財団が篤志行為の中心に据えたのが教育の分野である。
- 1953-1956年、ゲイザーがフォード財団の会長になる。