涜書:フーコー『知の考古学』:〈言説編成の四要素〉と〈言表の四機能〉:承前

Archaeology of Knowledge (Routledge Classics)知の考古学 (河出・現代の名著)
そろそろ私の忍耐力も限界に近づいて来ているが、コストの割には引き出せた利得が少なすぎる。「都合のいい女」状態であるような気もして忸怩たるものがあるが、あともうすこしだけ我慢してみる。



念のためもういちど通読してみたが、やはり可能的なポイントはここ[上記↑引用箇所]しか見つからない。ということは、
「対応していることを示した」というからには、二つのグループをきちんと「対応づけて」提示してくれなければならないのだが、フーコー先生にはどうやらまったくその気が無いか、
あるいはこれで示せているつもりかのどちらか(おそらく後者)なのだろう。
無茶なやつだ。というか
オヤヂいい加減にしろ



かくなるうえは──まことに不本意ながら──、流儀に反して「暴力的決めつけおやぢ的ベタ読み」を施すしか無い。目には目を。オヤヂにはオヤヂを。悪く思うな>フーコー
その第一の候補は、「4つのものを他の4つのものと並べて書いているからには、それらはベタに対応しているものとして読め」という格律にしたがって読む事である。すなわち、上記の表を、このように書き換えて読む、ということ:

 第II章2-6節「言説の編成」[→]   第III章第2節「言表の機能」[→] 
 言説編成の4つの要素   言表の機能の4つのドメイン 
 [1] 対象   a) a referential 
 [2] 言表様態・主体の地位   b) a subject 
 [3] 概念の体系   c) a associated (enunciative) field 
 [4] 主題と戦術   d) a (repeatable) materiality 



同様にして、上記の引用について「暴力的決めつけおやぢ的ベタ読み」の格律に従ってみると:

[この「対応」関係によって、【考古学プロジェクト】は、次の事ができるようになる:]

  • 【K】[1]-(a)
    ・それらの諸対象が従属する一般的な支配体制や、
    ・人々の語るところを規則正しく配分する分散の形態、
    ・それらの関説性のシステム、などを明確化しうることになるし、
  • 【L】[2]-(b)
    ・言表の相異なった様態が従属する一般的な支配体制、
    ・主体の位置の可能的な分配、
    ・それらを規定し、命ずるシステム、などを明確化することになる。
  • 【M】[3]-(c)
    ・それらのすべての共同の諸領域に共通な支配体制、
    ・それらのすべてが可能性をもっている継起、同時性、反復などの諸形態、
    ・これらすべての共存諸領野を相互に結びつけるシステム、などを明確化することになる。
  • 【N】[4]-(d)
    ・これら諸言表の規約が服従する一般的規則、
    それらが制度化され、受けいれられ、使われ、再使用され、相互に組み合わせられている仕方、
    それらが所有の対象や、欲求や関心のための道具、一つの戦術のための要素、などになる様態、を明確化しうることになろう。[中村[daisensei]訳:p.176-7]



たしかに、[1]-(a) および [2]-(b) は、ベタかつトリヴィアルな「対応」がみてとれる。
問題は [3]-(c) と [4]-(d)。
かろうじて、【N】に「戦術」という言葉が入っているのが救いと謂えば救いだが。でも「対象」って言葉も「様態」って言葉も入ってるしw。
暗澹たる気持ちを押さえつつ、ともかくもうすこしベタ読みを続ける。


邦訳がメタメタなので、やはり英訳を再掲[p.129]

Now, what has been described as discursive formations are, [...], groups of statements. That is, groups of verbal performances [...] which are linked at the statement level.
[以上に示した事によっていまやこういえるだろうが、]言説編成として記述されるのは、言表の集合[=群]──つまり、言表の水準に結びついた言語運用たち──である。これは次のことを含意する。すなわち言説編成を言表群として記述することによって、次の事ができるということ:

  • 【K】That which implies that one can define the general set of rules that govern
     (1=a) their [=statements] objects,
     the form of dispersion that regularly divides up what they[=who?] say,
     the system of (a) their referentials;
    ・言表群の諸対象・(述べられた事を規則的に割り振る)分布の形態・(言表群の)指示対象の体系 を支配するgeneral set of rules[?regime?]を規定すること。
  • 【L】that which implies that one defines the general set of rules that govern
     (2) the different modes of enunciation,
     the possible distribution of the subjective positions,
     and the system that defines and prescribes them[=?];
    [なにいってっかまるでわからん。]
  • 【M】that which implies that one defines the set of rules common to
     all (c) their associated domains, the forms of succession, of simultaneity, of the (4) repetition of which they are capable,
     and the system that links all these (c) fields of coexistence together;
  • 【N】that which implies that one can define the general set of rules that govern
     the status of these statements, the way in which they are institutionalized, received, used, re-used, combined together, the mode according to which they become objects of appropriation, instruments for desire or interest, elements for (4) a strategy.



いまや事態は──読解というよりは──ほとんどなぞなぞの様相を呈して来たわけだが。



だめだ。「オヤジ読み」路線は不可能。
4要素と4機能が錯綜して出て来ている、ってだけでなく
この4定式の中に、そもそも
(3) concept って言葉が
でてきてない

じゃん。ありえないよそりゃ。
それでどうやって「対応」を語るってーのよ。
俺の読解(およびなぞなぞ解き)能力を遥かに超えている。