涜書:チャンドラー『経営者の時代』

昼食。アマゾン発送速すぎ。もう届いた。

経営者の時代 上―アメリカ産業における近代企業の成立

経営者の時代 上―アメリカ産業における近代企業の成立

経営者の時代 下―アメリカ産業における近代企業の成立

経営者の時代 下―アメリカ産業における近代企業の成立

原題は「The Visible Hand: The Managerial Revolution in American Business」(1977)。

うわっ 原著安っ!

邦訳で約900頁(原著で600頁+)
わりとすぐ(1979年)に邦訳が出て、2006年3月現在で第12刷。地味なベストセラーですな。
訳はまぁまぁ読みやすくていい感じ。内容もおもしろそうです。

  • 序 論 ザ・ビジブル・ハンド
  • 第一部 生産と流通の伝統的過程
  • 第二部 交通と通信における革命
  • 第三部 流通と生産における革命
  • 第四部 大量生産と大量流通の統合
  • 第五部 近代産業企業の管理と成長
  • 結 論 アメリカのビジネスにおける経営者革命  

序論、第5部、結論まで。

  • 企業組織について、その「官僚制」的性格や、企業家の目標・動機などが論じられることは多いけど、「近代企業とはどういうものなのか」ということをテーマにした歴史的-比較的-研究は 少ないよ。
  • 経済学者は市場については研究しても企業については研究しないし、歴史家は企業家(がエエモンかワルモンか)については議論するけれど制度については分析しない。
  • でも、1840年までは、現在のような管理制度をそなえた大規模企業なんて存在しなかったのだから、その前後の変化はオオゴトだよ。
  • だから人でも市場(=見えざる手)でもなく、企業制度(=経営管理-という-見える手)を対象にした研究が必要だよ。

‥‥(大意)というような問題設定で。

いわゆる「google:取引費用アプローチ」みたいなもんは こういう↑問題関心を踏まえて出てきた、ということですかね。なかなか感慨深いですな。

 てことで 焦点は「1840年の前後」。「前史」である18世紀からはじまって(第一部)、19世紀を中心に陳述が展開されている(第二〜四部)ようです。で、第五部がまとめ。


ぱらぱらみた限りでは、「制度」という言葉は、ここではさしあたり「人でも市場でもなく」という残余概念として使われているようですな。


序論。
本書が提示する8つの主要命題[p.12-20]:

これらの命題は、まず最初に近代企業の性格についての若干の指標を示し、ついで、何故にマネジメントという目に見える手が、市場メカニズムという見えざる手にとってかわったのかを示唆するものである。[p.11]

近代企業の最初の出現について: なぜ・どこで・いかにして近代企業は出現したか

  • 1. 複数の事業単位を持つ近代企業が小規模の伝統的企業にとってかわったのは、近代企業による管理的な調整が、市場メカニズムによる調整と比較して、生産性においてもコストにおいても、さらにはまた利潤においても、優越するようになってからのことである。[p.12]
  • 2. 単一企業の内部に複数の事業単位の活動を内部化することの利益は、管理のための階層性組織が創設されることによって、はじめて実現される。[p.13]
  • 3. 近代企業が歴史の上で初めて出現したのは、経済活動の量が増大し、管理的調整による方が市場による調整よりも効率がよく、またいっそう有利な段階に達してから、である。[p.14]

近代企業の持続的成長について: なぜ・どこで・いかにして近代企業は支配的地位を維持し続けたか

  • 4. ひとたび階層的な管理組織が形成され、管理的調整機能を成功裏に遂行するようになると、階層制管理組織それ自体が、企業の永続性・活力・持続的成長のための原動力となる。[p.14]
  • 5. このような階層制組織を指揮する俸給経営者の経歴は、次第に技術的かつ専門的になった。[p.15]
  • 6. 複数単位制企業がその規模において大きくなり、業務内容の多様化を進め、また一方、その管理者がますます専門家となるにつれて、企業の経営がその所有から分離するようになった。[p.15]
  • 7. 職業経営者は経営上の意思決定にさいして、どちらかというと、現在の利潤を極大化する政策よりも、企業の長期的な安定と成長に有利な政策を選好する。[p.17]
  • 8. 大規模企業が成長し経済の主要部門を支配するようになるにつれて、経済の各部門、そしてついには経済全体の基本的構造が、大きく変化した。