お買いもの:山崎敏夫(2017)『企業経営の日独比較―産業集中体制および「アメリカ化」と「再構造化」』

via 中川宗人「経営モデルの企業組織への導入」 in 『21世紀の産業・労働社会学―「働く人間」へのアプローチ
https://contractio.hateblo.jp/entry/20220507/p3

  • 序章 企業経営の日独比較――その課題と方法――

第1部 大企業への産業集中体制の日独比較

  • 第1章 企業グループ体制の日独比較
  • 第2章 産業・銀行間関係に基づく産業システムの日独比較

第2部 経営の「アメリカ化」と「再構造化」の日独比較

  • 第3章 インダストリアル・エンジニアリングの導入の日独比較
    • 1. インダストリアル・エンジニアリングの導入の社会経済的背景
    • 2. 日本におけるインダストリアル・エンジニアリングの導入
    • 3. ドイツにおけるインダストリアル・エンジニアリングの導入
    • 4. インダストリアル・エンジニアリングの導入の日本的特徴とドイツ的特徴
  • 第4章 ヒューマン・リレーションズの導入の日独比較
    • 1. ヒューマン・リレーションズの導入の社会経済的背景
    • 2. 日本におけるヒューマン・リレーションズの導入
    • 3. ドイツにおけるヒューマン・リレーションズの導入
    • 4. ヒューマン・リレーションズの導入の日本的特徴とドイツ的特徴
  • 第5章 フォード・システムの導入の日独比較
  • 第6章 アメリカ的経営者教育・管理者教育の導入の日独比較
  • 第7章 アメリカ的マーケティングの導入と日独比較
  • 第8章 事業部制組織の導入の日独比較
  • 結章 日本とドイツの産業集中体制と企業経営
  • 補論1 1970年代から80年代における生産システムの展開の日独比較
  • 補論2 1990年代以降における株主主権的経営,コーポレート・ガバナンスへの転換の日独比較――企業経営の「アメリカ化」の再来とその影響――

第3章 インダストリアル・エンジニアリングの導入の日独比較

  • 第二部の話題
    3. インダストリアル・エンジニアリング
    4. ヒューマン・リレーションズ
    5. 管理・生産システム
    6. 経営者教育・管理者教育
    7. マーケティング
    8. 事業部制
  • 略称
    ・PTS:predetermined time standard system
    ・WF:work factor
    ・MTM:methods time measurement

第4章 ヒューマン・リレーションズの導入の日独比較

1. ヒューマン・リレーションズの導入の社会経済的背景
  • 177 「日本では,生産性向上運動の進展経営の近代化の推進と労働運動の高揚との結びつき,技術革新との結びつきが,それ[〜HRの導入]に関係していた。」

「合理化の推進にともなう労働者対策の必要性」とか書きつける時には、あわせて〈合理化〉なる語でもってどのような事態を指しているのかも教えていただきたい。

  • HRに期待が寄せられた事情:
    ① 生産性向上運動のもとでのアメリカヘの視察団の派遣によって,同国のHRの状況に関する認識が深まった
    ②合理化の推進にともなう労働者対策の必要性からもHRの導入が重要な意味をもつようになってきた。
    ③第2次大戦後になると,戦前の家族制度や封建的な身分関係に頼っていた労務管理のあり方からの転換という経営の近代化が求められることになり,そのための手段としてHRの導入が重要な意味をもつようになってきた。
    ④労働運動の高揚のもとで企業は労働争議への対応の必要性にも迫られることになり,労資の対立を調整するための手段として,HRが必要とされた。
    ⑤技術革新の進展にともない,作業工程の大きな変化のもとで労働者のモラール(勤労意欲)をいかにして向上させるかということも重要な課題となってきた。
  • 178 「例えば日産自動車では,1954年頃から新製品の開発,増産のための設備の近代化が急速にすすめられたが,それと同時に人間関係の体質改善も取り組まれるようになった。」
  • 178 「例えば鉄鋼業では,1954年に国際労働機関(ILO)の第5回鉄鋼委員会において人間関係に関する議題が取り上げられたのを機に,人間関倶について次第に関心が集まり,研究されるようになった。」
  • 178 人間関係論は開発援助の一つだったよ論。
    アメリカ側からみれば,HRは,戦後ドイツ企業において明らかな不十分さ,発展の遅れ,したがって対応の必要性が見出された領域における大きな政治的課題,使命あるいは一種の「開発援助」のひとつの重要な構成要素であった。」
2. 日本におけるヒューマン・リレーションズの導入
  • 時期区分:
    ・1947-1951 紹介期
    ・1951-1955 一部企業による摂取導入期
    ・1955以降 普及期

180に尾高邦雄

  • 180 「制度として経営における意思疎通に関する各種の施策が最初に採用されたのは1951年,52年頃のことであり(21)東京大学の尾高邦雄教授による従業員態度調査が初めて日本鋼管川崎製鉄所において実施されたのもこの時期のことであった(22)。こうして始まったHRへの取り組みは,生産性向上運動が開始される1955年頃から紹介・導入の段階を過ぎ,普及の段階に入り,この時期にひとつの転機を迎えた(23)。」
  • 183 「中小企業では,大企業に比べ労務管理は温情主義的,家族的な面をもつ半面で,労資間の意思疎通や労働者間の調整があまりされていなかった。こうした労務管理の行き詰まりの打開のためにHRによる近代的な人間関係の形成が重要な課題となり1957年頃から中小企業にもHRが徐々に導入されていった。」

ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ」物語

  • 184 「社内報の利用によって労働者本人のみならず家族に対しても「会社に対する協力心」をもたせることが意図されており,いわば「家族ぐるみの経営」という意識の醸成にHRのひとつの特徴があった。こうした動きは新生活運動ないし家族計画運動というかたちで推進されたのであり,そのねらいは,本来企業が行う労働力の「保全」機能を家族に代替させることにあった。」

187から態度調査。