ルチアーノ・フロリディ(2010→2021)『情報の哲学のために』

セミナーがあると聞いて。

The Five Books 学びながら読む "おそい" 読書

  • 書籍:『情報の哲学のために』(ルチアーノ・フロリディ著)
  • 講師:榎本 啄杜

 「現代社会のキーワードをいくつか挙げて」と言われると、大半の人が「情報」を含めて答えるのではないでしょうか。月並みな表現ですが、私たちは情報時代を生きています。ネット記事や新聞で「情報」を読み漁り、空に浮かぶ黒い雲から天候の「情報」を収集し、陰謀論めいた魅惑的な「情報」に惑わされ、スマホで通信できる「情報」の量を日々気にしています。
 しかし、一旦冷静になって「ところで情報って実際のところ何なの?」と考え始めると、私も含め多くの人が言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。言われてみると、上に挙げた数々の情報の例は、すべて同じ意味で使われているような気もするし、若干違うニュアンスを帯びているような気も……。驚くべきことに、現代社会を支えている「情報」という概念は、意外とよくわからないフワフワとしたものです。
 哲学者の仕事の一つは、こうした曖昧な概念に関する厄介な問題を整理することです(もちろん、専売特許ではありませんが)。哲学者ルチアーノ・フロリディは、ここ20数年の間に「情報の哲学」という新しい分野を確立し、情報概念のあれこれについての書籍・論文を数多く世に送り出してきました。そんなフロリディの考えを最も手軽に知ることができるのが、今回の講義で扱う『情報の哲学のために』です。
 原書のInformation(2010)は、オックスフォード大学出版のVery Short Introductionsシリーズから出版されています。これを聞くと「なんだ、あの短くて易しめの入門書か」と思う人もいるかもしれません。しかし、侮るなかれ。本書はフロリディ哲学のエッセンスをこれでもかと詰め込んでいるがゆえに、理解するためにはさまざまな前提知識が必要で、独学者が本書だけを読んで理解し尽くすことは困難です。
 今回の講義では、じっくりと、それでいて効率良くフロリディ哲学のエッセンスを味わうため、特に重要だと思われる一部の章だけを扱うことにします(詳細は「各講義の内容」参照)。ぜひ私と一緒に、「情報の哲学」と「フロリディ哲学」に入門しましょう!

https://the-five-books-floridi-information.peatix.com/


  • はじめに
  • 第1章 情報革命
  • 第2章 情報のことば
  • 第3章 数学的な情報
  • 第4章 意味論的な情報
  • 第5章 物理学的な情報
  • 第6章 生物学的な情報
  • 第7章 経済学的な情報
  • 第8章 情報の倫理学
  • エピローグ 自然(ピュシス)と技術(テクネ)の融合
  • 〈解説に代えて〉「情報圏の構築に向けた複数のアプローチ――フロリディの情報論とネオ・サイバネティクス」(河島茂生)