高巌(1995)『H・A・サイモン研究:認知科学的意思決定論の構築』

久々に再訪。https://contractio.hateblo.jp/entry/20160415/1
今回は第六章「認知科学から経済動学へ」をば。

第六章 認知科学から経済動学へ

  • 第一節 手続合理性の理論
    • (一) 古典派経済学から新古典派経済学
    • (二) 手続的合理性の理論
      • 情報処理システムの目的合理性
      • 実体的合理性-手続的合理性
      • 実体的合理性の理論としての新古典派経済学
    • (三) 経済理論と手続き的合理性
      • 経済学者による現場体験
      • マネジメント・サイエンスの台頭
      • 競争の不完全性
  • 第二節 不確実性の経済学
    • (一) 情報の経済学
      • 情報と探索活動 436
      • 「情報の経済学」に対する批判 437
    • (二) 合理的期待形成の理論
      • 主観的期待効用の極大化
      • 失業とインフレーション
      • 景気循環
    • (三) 統計学的決定理論
      • ベイズの定理
      • トヴェルスキー=カーネマンの諸研究
      • 水害保険の研究
    • (四) ゲームの理論
      • ゲーム論の限界
      • 価値と信念
    • (五) エイジェンシー理論
    • (六) 不確実性の経済学としての問題解決理論
      • 不確実性下における合理的選択行動
      • 十分に構造化されていないタスクにおける合理的問題解決行動
  • 第三節 実証研究に基づく「経済動学」
    • (一)補助的仮説と実証研究
      • 補助的仮説の意義
      • 補助的仮説の実証性
    • (二) 抵抗と反論
      • 実証研究に対する抵抗
      • 新古典派経済学によるサイモン批判 461
      • 経済動学と意思決定プロセス 462
      • 心理的過程の分析 464
      • 動機づけられた行為 465
    • (三) 動機づけられた行為
      • 経済動学と意思決定プロセス 462
      • 心理的過程の分析 464
      • 動機づけられた行為 465
    • (四) 注意と期待
      • 注意と経済動学 467
      • 期待と経済動学 468

第二章「経済学から認知科学

第一節 経済理論のプロセス化

  • [071] 「もしシロップを注ぎ込むボールが激しく揺れ動くとしたら、もしくは均衡に到達するまでの動きについて何かを知ろうとすれば、非常に多くの情報が必要となる。とりわけ、シロップの特性について多くの情報が求められよう。中でも、シロップの粘着性についての知識―それが入っている容器に「適応」していく速度、重心を低くするという「目標」を達成する速さに関する情報など―がどうしても必要となってこよう。つまり、適応的有機体の短期の行動、もしくは複雑で急速に変化しつつある環境下にある有機体の行動を予測するには、その目標を知るだけでは不十分である。内的構造と特にその適応メカニズムについて多くを理解しなければならない。」
     たとえば、重力に加え、液体に働く別の力があるとすれば、均衡における行動を予測する場合だけでも、さらに多くのことを知らなければならない。7
    注7)「Simon, H A., "Theory of decision-making in economics and behavioral science," p. 289. このサイモンの主張は、1970年代に入ると「実質的合理性から手続的合理性へ」という議論に変わっていぐ。 Simon, H. A., "Human nature in politics: the dialogue of psychology with political science," The American Political Science Review, 79(2), June 1985, p. 294.」