坂部恵(1976)『理性の不安:カント哲学の生成と構造』

理性の不安―カント哲学の生成と構造

理性の不安―カント哲学の生成と構造

  • 作者:坂部 恵
  • 発売日: 2001/06/01
  • メディア: 単行本
ISBN:B000J9AEYY

  • まえがき
  • I 人間学の地平
    • 1 『美と崇高の感情に関する観察』の周辺
    • 2 自然地理学の講義
    • 3 『1765-66年冬学期の講義計画による概観』
    • 4 伝記的背景
    • 5 人間学の講義
    • 6 アントロポロギア・トランスツェンデンタリス──一つ目の巨人と二つ目の市民
  • II 『視霊者の夢』の周辺
  • III カントとルソー――時代に先駆けるものの喜劇と悲劇

  • IV 中間考察――「独断のまどろみ」時代の構造
  • V Phase π-λの趣味批判関係遺稿について
  • VI 知覚の予料・火・エーテル演繹

I 人間学の地平

美と崇高との感情性に関する観察 (1948年) (岩波文庫)』(1764)について。

  • [06]【話法】 「わたしはむしろ、ここで森も木も見ず、足元の草をわけて道を見出すことだけに、可能なかぎりつとめたい。」
  • [09] 「この著作[『美と崇高の感情に関する観察』]は、批判期前の未完成なものという観点からではなく、むしろドイツ通俗哲学あるいは啓蒙哲学の一つの到達点を示す古典として、もっと広く読まれてよいのではないか、とわたしは思う。このジャンルの原型が、ハチスン、バーク、シャフツベリ等のイギリス・モラリストのエッセイにあることは周知のところであるが、幾多の模倣的作品とことなって、カントのものは模倣というにはあまり身につきすぎている、という点が、ここでは肝要なのである。」
  • [26] カントの言葉
    「青年の教育ということは、本質的に次のような困難を持っている。すなわち、自然的な順序から言えば、訓練と経験を積んだ理性によって初めて理解されるはずの知識を、悟性の成熟を待つことなく、年月の先を越して与えることを、承知の上で余儀なくされる、ということである。」
    だから、「カントの考える「哲学すること」は、何より成熟した壮年に相応しいことであった。」