ハンナ・アーレント(1970/1982→1987/2009)『カント政治哲学講義』

苦手分野克服への旅は続く。


ISBN:4588099183

  • 『思考』への補遺(『精神の生活』第一巻より)
  • カント政治哲学講義録(ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチにて、一九七〇年秋学期)
  • 構想力(一九七〇年秋、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで行なわれた、カントの『判断力批判』についてのセミナー)
  • ハンナ・アーレントの判断論

The Five Books:齋藤宜之「ハンナ・アーレント『カント政治哲学講義』」(02月26日(日) ~ 03月26日(日))

講義の内容

 この講義では、ハンナ・アーレントの講義録『カント政治哲学講義』を読み解いていきます。同書は、1970年、ニューヨークの大学、The New School for Social Researchで開講された全13回にわたる講義が、アーント没後の1982年に一書にまとめられて刊行されたものです。
 カントの「政治哲学」について論じるならば、『永遠平和のために』といった著作に着目しそうなものですが、この講義でアーレントが着目しているのは、普通に読めば「美学」の書以外のなにものでもない『判断力批判』の第一部です。同書の課題は、私たちが芸術作品や自然物に対して「美しい」という感情を抱くときの心のメカニズムを解明することであり、したがって当然、「政治」という主題については一言も触れられていません。しかしアーレントは『判断力批判』第一部のなかから、「政治哲学」の原理を見事に取り出してくるのです。「美」と「政治」という一見まったく異なる事象のあいだの本質的な共通性を明らかにしていくアーレントの手並みを見届けることで、「政治とは何か」、ひいては「人間とは何か」といった問題について考えていきたいと思います。
//

各講義の内容
  • 第1回(02月26日(日):10:30-12:00)
    アーレントが、カントの『判断力批判』を「政治哲学」の書として読解するに至る背景について解説していきます。また、『判断力批判』第一部の概略をあらかじめ紹介することで、次回からの読解のための準備とします。その他、アーレントの哲学に関する全般的な解説もする予定です。
  • 第2回(03月05日(日):10:30-12:00)
    「第一講義」「第二講義」「第三講義」について解説していきます。ここでは、「美」と「政治」という一見無関係な主題のあいだの結節点として、「社交性」という概念が提示されます。「美」という個人的なものと見なされる事象が、実は「他者」との関係性を不可欠としていることが明らかにされ、政治の問題へと接続されていきます。また、カントの「訪問権」という興味深い概念についても論じられています。
  • 第3回(03月12日(日):10:30-12:00)
    「第四講義」「第五講義」「第六講義」について解説していきます。ここでは『判断力批判』に見られるカント哲学の特徴について、プラトンの哲学や世界観と比較されながら論じられます。一言で言えば、「地上に生きる複数的な人々」を論じているのが『判断力批判』であるということが明らかにされていきます。
  • 第4回(03月19日(日):10:30-12:00)
    「第七講義」「第八講義」「第九講義」「第十講義」について解説していきます。ここでは『諸学部の争い』などの『判断力批判』以外の著作についても言及され、一般的意味でのカントの「政治哲学」についても論じられています。とはいえ、その場合でもあくまで根底にあるのは政治哲学の書としての『判断力批判』であり、「行為者」と「観察者」という対比を軸にしてユニークな議論が展開されます。
  • 第5回(03月26日(日):10:30-12:00)
    「第十一講義」「第十二講義」「第十三講義」について解説していきます。講義の終盤に至って、アーレントは『判断力批判』の緻密な解読作業に入ります。カントが美的なものにとって不可欠の能力であるとした「共通感覚」や「構想力」が、まさに政治的な判断にとっても不可欠の能力であることが明らかにされていきます。
参加料金

9350円 (1870円/講義×5回)

http://www.the-five-books.com/lecture/72