【選定】清水幾太郎(1972)『本はどう読むか』

目次

 はしがき 003
1 私の読書経験から 007
2 教養のための読書 037
3 忘れない工夫 069
4 本とどうつきあうか
5 外国書に慣れる法
6 マスコミ時代の読書
 1 新しいマスメディアの出現
 2 マス・メディアの種類と性質
 3 文字の世界
 4 活字メディアと電波メディア

はしがき

 過去数十年間、私は、人間とつきあうよりも、書物とつきあって来たように思う。少しアブノーマルな生活であったかも知れない。しかし、その代り、書物とつきあう術は或る程度まで身についたような気がする。
 どういう本を選んだらよいか。どういう方法で読んだらよいか。読んで得た内容を忘れないためには、どうすればよいのか。蔵書の整理には、どういう方法があるか。外国書に慣れるには、どうしたらよいか。
 これらの点は、すべての読書子にとって重大な問題である。正直のところ、私自身、何回となく、これらの点で愚かな失敗を重ねて来たし、後悔の苦さも味わって来た。
 本書は、ー人の読書子としての私の経験を回顧しながら、ーつーつ、右の諸問題に答えようとしたものである。私が読者にお伝え出来るのは、所詮、私自身の流儀に過ぎないが、それでも、きっと、若干の点で読者に役立つであろうと思っている。