川上恒雄(2009)「松下幸之助と生長の家――石川芳次郎を介して」

  • 1. はじめに
  • 2. 幸之助の世界観と生長の家
    • 生命力に満ちた世界
    • 富の無限供給
  • 3. 先輩実業家としての石川芳次郎
    • 『生命の実相』を勧めた人物?
    • 芳次郎の半生
  • 4. 生長の家 - 石川家 - PHP
    • 小木虎次郎と貞子
  • 幸之助と石川家、そして媒介役としての川越清一
  • 5. おわりに

葛西賢太(1992)「調和思想からキリスト教科学へ─癒やしの思想と技法をめぐって」

  • 1. はじめに
  • 2. キリスト教科学
  • 3. 調和思想
    • (1) 時代精神としての調和思想
    • (2) メスメルからクインビーへ
  • 4. 物理的流体から「心」へ
  • 5. 治療技法の変容と「手の使用」概念
  • 6. 結語

メモ

1. はじめに
2. キリスト教科学
  • 治癒は奇跡ではなく法則に基づいて起こる(だからキリスト教「科学」と呼ばれる)
  • 「霊的癒し」は「信仰治療」に対置された概念
  • 4「癒しの例は無数にあるが、これらに一貫しているのは、聖書あるいは『科学と健康』を読んで理解すること、その一節を口にすることなどが、癒しを引き起こしている点である。テキストの介在という点で、キリスト教科学の癒しの形態は一貫している。癒しのための特別な身体的技法などは存在していない。実践士と一般会員との違いは、それに専従するか他に生業を持っているかということのみなのである。」
3. 調和思想
  • 19世紀アメリカの民間療法
    ①メスメリズム
    キリスト教生理学運動
    ③トムソン薬草思想:1820年
    ホメオパシー
    ⑤水治療法
    ⑥整骨療法
    カイロプラクティック:1895年
  • シドニー・オールストロームの「調和的宗教」
    • ・教会に根ざさず、神学を持たず
      ・霊的な平静さ・身体の健康・経済的繁栄は、人間と宇宙の交流によるものと理解する信仰形態
    • ・カルヴィニズムの書き換え:宗教的罪→無知による過失(=調和の喪失)
      ・調和の回復=罪からの解放
  • フランツ・メスメル:スイス人の医師。1774年に動物磁気(animal magnetism)という物理的流体を発見したと考えた。
    • 1836年にポワンがニューイングランドを横断して行なった講演実演旅行がアメリカにおけるメスメリズムの流行のきっかけとなった。
    • 磁気療法はキリスト教信仰を強化し、道徳的感受性を高めると確信された。
    • クインビーも1938年にポワンの講演によってメスメリズムを知った。
  • 6 クインビーの病因論と治療論
    • 病気は実在しない。病気なのだという思い込みの中に存在する。
    • 治療とは、この思い込みを解除すること。
    • したがって治療力は患者の医師・霊媒にたいする信頼のうちに生じる
    • 治療は心によって媒介される。
    • 心とは霊的物質である。
  • ホメオパシーの原理
    • ヒポクラテスの原理:似たものは似たものを治す。
    • 極微量の原理:極端に薄められた物質は、その結果として(液体が気体になるように)物質性を失い、かわりに霊性を得る。
5. 治療技法の変容と「手の使用」概念
  • メスメルにおける動物磁気は物質。クインビーにおける鍵観念は「霊的物質」。エディにおいては「心Mind(mortal Mind / divine Mind)」。
    • メスメリスムの影響は、こうした「流体」が物質性を失う方向への展開とは別に、「流体」の物質性が強まるとともに身体のうちに限定されていく方向への展開もあった。(例:カイロプラクティック

文献

吉永進一(2010)「近代日本における神智学思想の歴史」

CiNii 論文 -  近代日本における神智学思想の歴史(<特集>スピリチュアリティ)

メモ

1-2 日本の歴史研究
  • 378 「日本では宗教と自然科学の対立が強くなく、また既成宗教と霊性文化との対立が見られないために、霊性文化の領域を策定するのはそう簡単ではない。」
  • 霊性思想が出版物で盛んに流通するようになるのは明治30年代後半から
1-3 メタフィジカル宗教と神智学
2-1 明治から大正へ
  • 382 「アメリカに比べれば、日本の霊性文化で神智学の占める重要性は低い。かなり早くから紹介されたにもかかわらず、つねに忘却されていった。」
  • 386 「先に神智学徒スティーブンソンが儒教と神智学の共通性を指摘していたと述べたが、日本の場合、欧米のメタフイジカルな思想に伝統的な思想が結びつきやすい。小林[参三郎]の例は、個体の働きがそのまま霊的な回路で共同体の利福につながるという個と全体をつなぐ近世の楽観的な社会道徳観が、神智学概念によって蘇ったという点で興味深い。」
2-2 昭和期 三浦関造の神智学
  • 392 「三浦の生涯を振り返れば・大正時代は新教育というリベラルな立場にいたはずの人物が・ファシスト的オカルティストと提携し、戦後はさらに別のメタフィジカル教師の教えを受容して、冷戦下の終末論を唱える。一見すれば紆余曲折とも思われるが、内的霊性という観点からすれば、戦争前は日本という国家の内的な霊性(太古の黄金時代)の称揚、戦後は地球の内的霊性(シャンバラ)とヨガを通しての個人の霊性の発揮と、社会体制の変化に応じて霊性思想を読み替えてきたということはできよう。」

漆原直行(2012)『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』

特集:自己啓発https://contractio.hateblo.jp/entry/20200804/p0

  • 第1章 ゼロ年代のビジネス書幻想
  • 第2章 ビジネスション掟と罠
  • 第3章 「ビジネス書」というビジネス

  • 第4章 ビジネス書に振り回される人々
  • 第5章 「そこそこ」賢いビジネス書とのつき合い方
  • 第6章 ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない
  • 主な参考文献

第1章 ゼロ年代のビジネス書幻想

  • 2000年代のビジネス書ベストセラーランキング
  • 「ちなみにコーチングとは、要するに「コーチすること」なのですが、コーチ(COACH)は「馬車」を意味しています。馬車が人を目的地まで運ぶように、コーチを受ける人を目標達成に導くための技法というわけです。」
  • 潮目が変わったのは2003年 「以降のビジネス書界では「金持ちになる」「成功」といったテーマを臆面もなく語り、煽るような自己啓発系ビジネス書、いかにして自分が成功者となったか自慢しつつ、既存の定番ビジネス書からネタをつまんできて組み合わせたような(自己啓発+仕事術+ロジカルシンキングの盛り合わせ的な)ビジネス書が跋扈するようになります。」
  • 2004年 新書ブーム
  • 2007年 レバレッジ、コールドリーディング
  • 2008年 勝間和代ブレイク

第2章 ビジネスション掟と罠

 ハッカーのカルチャーに大きな影響を与えたのが、1960年代後半にアメリカで巻き起こったヒッピームーブメントです。ベトナム戦争に反対し、徴兵に反発する若者たちが、愛と平和を唱え、芸術を愛し、自然回帰を標榜。既存の社会通念や制度を否定し、コミューンと呼ばれるヒッピーの共同体を形成したりしながら、魂の解放や真に自由な個人の確立を求めて運動を展開していきます。伝統的なキリスト教の教えも否定し、仏教の禅やヒンズー教といった東洋の宗教・思想に強い関心を寄せたのもヒッピームーブメントの特徴でしょう。
 …
 かたや禁欲的であることを是とした、伝統的なキリスト教へのカウンターパートとして生まれたニューソートと、それに端を発するポジティブシンキング。
 一方、既存のキリスト教的道徳観や価値観、体制への反発・反抗を求心力にして大きなムーブメントを形成したヒッピームーブメントと、その精神性を引き継ぎ、コンピュータテクノロジーを駆使して新しい価値観を提示し、自由を得ようと試みたハッカーカルチャー。
 両者に通底するのは、既成概念や既存の価値観の否定です。

雑ですな。
まぁ当たらずとも遠からずというところでしょうか。

尾崎俊介(2019)「アメリカ自己啓発本出版史における3つの「カーネギー伝説」」

特集:自己啓発https://contractio.hateblo.jp/entry/20200804/p0

1. 最初のカーネギー

アンドリュー・カーネギー(1835-1919)について。

  • 40 「スコットランドの小村に住む貧しい手織工の家に生まれた。彼の一家はキリスト教カルヴァン派の勢力お強い子後に置いてその過酷な教義を嫌い、現世における人間の幸福を認める北欧の神学者エマニュエル・スウェーデンボルグ(1688-1772)の学説を熱烈に信奉する家柄であり、そのせいもあってカーネギーが13歳の時に「幸福の追求」を国の設立理念として謳う新興国アメリカに移住する。」
  • ・『フランクリン自伝』:身分制度の打破をともなう出世
    ・『カーネギー自伝』:起業のスリルと蓄財の喜び
  • フランクリンの場合は「勤勉・節約・節制」が問題だった。カーネギーにおいては、蓄財という反キリスト教的営為をどのように正当化できるかが問題となった。
    • 解:後で良い使い方をするなら金儲けも悪くない
    • 「金儲け=悪」という公式を突破するのは、カルヴァン主義の強かったアメリカでは難しかった。この突破を果たしたのがカーネギーの自伝だった。
    • それでも、当時の自己啓発書の主流は「勤勉」の方だった。ハバード『ガルシアへの手紙』、クレイン『バビロンの大富豪』
  • 44 「19世紀が終わりに近づく頃、アメリカ人の多くは企業に勤めるホワイトカラーになっていた。給料をもらって生活するサラリーマンにとって、「一代で莫大な財産を築く」という起業家の夢はあまりにも現実味が薄かったのだ。20世紀を生きる若い世代のアメリカ人にとって『カーネギー』自伝は遠い昔の伝説、古き良き時代の夢物語であって、もはや他人事に過ぎなかった。」

2. 二人目のカーネギー

デール・カーネギー(1888-1955)について。

  • 51 ニューソート応用心理学
    「また本書[カーネギー『人を動かす』]が、19世紀後半以降のアメリカに広まっていた「ニューソート」という思想的潮流、及び20世紀初頭に同じくアメリカで流行した「応用心理学」の影響を強く受け、ポジティヴなメンタリティーを維持し続けることの重要性を標榜していたことも明記しておかなければならない。特に1910年代から30年代にかけ、デールはウィリアム・ジェームズやアルフレッド・アドラーといった心理学者や、ハリー・A・オーバーストリート、ヘンリー・C・リンク、バッシュ・ヤング、アーサー・フランク・ペイン、ルイス・E・ビッシュといった応用心理学者たちの著作に読みふけり、また彼らと親しく交友することで、外交的でポジティブなパーソナリティこそ大恐慌後の厳しい時代を乗り切るために必要なものだという確信を強め、その確信を『人を動かす』の基本概念に据えたのだった。」

3. カーネギーと約束した男

ナポレオン・ヒル(1883-1970)について。

59

 だが、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』には、その驚異的な売上に加えてもう一つ、驚愕のストーリーが付帯する。
 これはマット・ノヴァクというジャーナリストが「アメリカ一の詐欺師」という記事*の中で告発していることなのだが、それによるなんとナポレオンヒルは「成功哲学」の体系化の仕事をアンドリュー・カーネギーから依頼されたことはないというのだ。
 否、それどころではなく、そもそもヒルアンドリュー・カーネギーに面会したことすらないというのである。となれば当然、彼がヘンリー・フォードに会ったことはないだろうし、マハトマ・ガンディーに会ったこともないだろうし、ウッドロー・ウィルソン大統領の補佐官としてホワイトハウスで(無償で)働いたこともおそらくない、ということになる。… 要するに、ヒルが作り上げたカーネギーの「成功哲学」云々というのは、すべてヒルの自作自演なのだ。世紀のベストセラー『思考は現実化する』は、ある意味、稀代の詐欺師の著作だったのである。
* https://paleofuture.gizmodo.com/the-untold-story-of-napoleon-hill-the-greatest-self-he-1789385645

そこまで盛る~?!

61 まとめ

 以上のべてきたように、

それぞれ画期的な自己啓発本となった。

バーバラ・エーレンライク(2009→2010)『ポジティブ病の国、アメリカ』

特集:自己啓発 https://contractio.hateblo.jp/entry/20200804/p0

原題サブタイトルは「ポジティブシンキングは いかにアメリカを弱体化させてきたか」。この著者には他にも複数邦訳があり、『魔女・産婆・看護婦―女性医療家の歴史 (りぶらりあ選書)ISBN:4588352318 は読んだことがある。昨年には「こんまりは嫌い」ツイートで炎上してましたね。


  • 第1章 微笑みで死を遠ざける?―がんの前向きなとらえ方
  • 第2章 望めば何でも引き寄せられる?
  • 第3章 歴史から見る、アメリカ人が楽観的なわけ
  • 第4章 企業のためのモチベーション事業
  • 第5章 神はあなたを金持ちにしたがる
  • 第6章 ポジティブ心理学―幸せの科学
  • 第7章 ポジティブ・シンキングは経済を破壊した
  • 第8章 ポジティブ・シンキングを乗り越えて

第1章 微笑みで死を遠ざける?―がんの前向きなとらえ方

  • 著者、細胞生物学で博士号を取ってた
  • 35 「犠牲者という言葉すら禁句になっているので、乳がんをわずらう女性を指す名詞は存在しない。部分的に乳がんに撲滅運動の手本になったエイズ撲滅運動と同じく、「患者」「被害者」という言葉は、自己を憐れみ、抵抗をしないイメージがあるので、不適切だと判断されているのだ。そのかわり、動詞はある。治療の真っ只中にある人のことは「闘っている」と表現する。」

第2章 望めば何でも引き寄せられる?

  • 73 「現実の事件や、人間同士の織りなす出来事からこうして目を逸らすのは、ポジティブ・シンキングの核心部分に、どうにもならない無力さが存在するということだ。どうしてニュースを追わないのだろう? それは、米国講演家協会の総会である人から聞いたところでは、「自分ではどうすることもできない」からだ。」
  • 73 「心のパワーがほんとうに「無限」であるなば、自分の人生からネガティブな人を追い払う必要すらないではないか。たとえば、相手の行動をポジティブに捉えることもできる。彼は私のためを思って批判するのだ、とか、彼女は私への好意に気づいてもらえないから不機嫌なのだとか。ネガティブな人やニュースを排除するなどして環境を変えるべきだとアドバイスするのは、われわれの願望にまったく影響を受けない「現実世界」が存在すると認識しているからこそである。」
  • ロンダ・バーン(2006→2007)『ザ・シークレット角川書店
  • 76 「スポーツ選手ではなくとも「コーチング」を必要とするという概念は、1980年代に生まれた。」
  • コーチング」なるジャンルを確立した古典: マイク・ハーナッキー(1982→1991)『成功の扉―すべての望みはかなえられる (サンマーク文庫)』サンマーク文庫
  • 78 「コーチングに携わる人びとは神秘的なパワーに引きつけられる。それはどうしてだろう? そう、それ以外に伝授できることがないからだ。」

第3章 歴史から見る、アメリカ人が楽観的なわけ

p. 111

二十世紀、ポジテイプ・シンキングの不断の効果をもっとも多くのアメリカ人──また、世界中の人──に紹介した本は、いうまでもなくノーマン・ヴィンセント・ピールの1952年の著書、『積極的考え方のカ──ポジテイプ思考が人生を変える』である。ピールはプロテスタント系の主流派教会の牧師だったが、聖職者になってまもなくニューソートに引きつけられた。のちの本人の記述によればれはニューソートに賛同する アーネスト・ホームズ という人物からの影響だった。

「若いころの私を知る人ならば、アーネスト・ホームズのおかげで私がどのように変わったか、よく理解できるだろう。彼によって、私はポジテイプ思考の人間になった」。

ポジティプ・シンキングと、ピールの信仰する、カルヴァン派から分かれたオランダ改革派教会の教義とのあいだに矛盾を見つけても、彼はまったく動揺しなかった。神学を学ぶ学生時代にあまり優秀ではなかった彼は、卒業するころには神学論争に強い嫌悪感をもつようになっていた。そして、金銭、結婚、仕事に関する一般的な問題の解決に役立てるため、キリスト教を「実用的」なものにしようと決意した。彼は、十九世紀のニューソートの提唱者たちと同じく、ある意味自分を治療師であると考えていた。ただ、二十世紀に治療するべき病気は、神経衰弱症ではなく「劣等感」だった。ピール自身もこれと闘っていた

速水健朗(2008)『自分探しが止まらない』

特集:自己啓発 https://contractio.hateblo.jp/entry/20200804/p0

自分探しが止まらない (SB新書)

自分探しが止まらない (SB新書)

  • まえがき
  • 第1章 世界に飛び出す日本の自分探し
  • 第2章 フリーターの自分探し

  • 第3章 自分探しが食い物にされる社会
  • 第4章 なぜ自分探しは止まらないのか?
  • あとがき