葛西賢太(1992)「調和思想からキリスト教科学へ─癒やしの思想と技法をめぐって」

  • 1. はじめに
  • 2. キリスト教科学
  • 3. 調和思想
    • (1) 時代精神としての調和思想
    • (2) メスメルからクインビーへ
  • 4. 物理的流体から「心」へ
  • 5. 治療技法の変容と「手の使用」概念
  • 6. 結語

メモ

1. はじめに
2. キリスト教科学
  • 治癒は奇跡ではなく法則に基づいて起こる(だからキリスト教「科学」と呼ばれる)
  • 「霊的癒し」は「信仰治療」に対置された概念
  • 4「癒しの例は無数にあるが、これらに一貫しているのは、聖書あるいは『科学と健康』を読んで理解すること、その一節を口にすることなどが、癒しを引き起こしている点である。テキストの介在という点で、キリスト教科学の癒しの形態は一貫している。癒しのための特別な身体的技法などは存在していない。実践士と一般会員との違いは、それに専従するか他に生業を持っているかということのみなのである。」
3. 調和思想
  • 19世紀アメリカの民間療法
    ①メスメリズム
    キリスト教生理学運動
    ③トムソン薬草思想:1820年
    ホメオパシー
    ⑤水治療法
    ⑥整骨療法
    カイロプラクティック:1895年
  • シドニー・オールストロームの「調和的宗教」
    • ・教会に根ざさず、神学を持たず
      ・霊的な平静さ・身体の健康・経済的繁栄は、人間と宇宙の交流によるものと理解する信仰形態
    • ・カルヴィニズムの書き換え:宗教的罪→無知による過失(=調和の喪失)
      ・調和の回復=罪からの解放
  • フランツ・メスメル:スイス人の医師。1774年に動物磁気(animal magnetism)という物理的流体を発見したと考えた。
    • 1836年にポワンがニューイングランドを横断して行なった講演実演旅行がアメリカにおけるメスメリズムの流行のきっかけとなった。
    • 磁気療法はキリスト教信仰を強化し、道徳的感受性を高めると確信された。
    • クインビーも1938年にポワンの講演によってメスメリズムを知った。
  • 6 クインビーの病因論と治療論
    • 病気は実在しない。病気なのだという思い込みの中に存在する。
    • 治療とは、この思い込みを解除すること。
    • したがって治療力は患者の医師・霊媒にたいする信頼のうちに生じる
    • 治療は心によって媒介される。
    • 心とは霊的物質である。
  • ホメオパシーの原理
    • ヒポクラテスの原理:似たものは似たものを治す。
    • 極微量の原理:極端に薄められた物質は、その結果として(液体が気体になるように)物質性を失い、かわりに霊性を得る。
5. 治療技法の変容と「手の使用」概念
  • メスメルにおける動物磁気は物質。クインビーにおける鍵観念は「霊的物質」。エディにおいては「心Mind(mortal Mind / divine Mind)」。
    • メスメリスムの影響は、こうした「流体」が物質性を失う方向への展開とは別に、「流体」の物質性が強まるとともに身体のうちに限定されていく方向への展開もあった。(例:カイロプラクティック

文献