いただきもの:『中央公論』2021-8 (特集:教養と自己啓発の深い溝)

どうもありがとうございます。
中央公論専用封筒をご覧ください
f:id:contractio:20210714125852j:plain:w450

chuokoron.jp

特集:教養と自己啓発の深い溝

  • 積めば積むほど、自らに厳しくなる 知識の豊かさが本質ではない(村上陽一郎
  • 修養ブームが生み出した潮流 近代日本の自分磨き (大澤絢子)
  • 青年学級、大学、そして司馬遼太郎ブーム 格差ゆえに教養が求められた時代 (福間良明
  • 技術知・実務知、歴史的人物、自分らしさ...... 「ビジネスマンの教養」の系譜と現在 (牧野智和)
  • 大きな物語」が喪失した時代 新たな知の共同体を作れるか (隠岐さや香
  • 運命から自身を解放するために 独学のススメ (読書猿)
  • 学びの場か、信者ビジネスか......注目集める仕組みのいま オンラインサロンに人は何を求めているのか (藤谷千明)

特集 今こそケインズ!?

  • 『一般理論』から読み解く現代日本 市場・規制・コロナ禍 (山形浩生
  • 現代マクロ経済学の源流と現在地 その知見がもたらしたもの (矢野浩一)
  • 政策とアカデミズムへの影響 ケインズはいかに日本に受容されたか (野原慎司)

大澤絢子「修養ブームが生み出した潮流 近代日本の自分磨き」

1. 自己啓発のルーツ

  • 修養とは:あるべき自己を目指して努力すること

2. 修養する松下幸之助

  • PHP研究所京都本部内にある神社の名前は「根源の社」
  • 39
    • ダスキン創始者 鈴木清一は、西田天香に学んで「道と経済の合一」を願う「祈りの経営」を掲げた
    • 職場では毎朝般若心経が唱和される
    • 社員研修も一燈園でおこなわれ、近隣の家を尋ねてトイレ掃除を無償で行う
  • 39「一燈園はこのように宗教的な実践を行うが、宗教法人ではなく、西田[天香]は僧侶や新宗教の教祖などではない。一燈園で研修を受ける社員にも、信仰の獲得は求められない。」

〈宗教ではない〉キタ―――(゚∀゚)―――― !!

3. 近代日本初の自己啓発

  • 40 修養には二つの側面がある
    • ①自己の精神的向上を目指す姿勢
    • ②それを通して社会的成功を目指す姿勢
  • 近代日本を代表するベストセラー、スマイルズ中村正直訳)『西国立志編』(自助論)は①の例。

修養は cultivation の訳語

4. 新しい時代の自分探しと修養ブーム

  • 40 『西国立志編』の説く修養が社会的成功と立身出世に結び付けられていくのは明示30年代になって以降
    それより前の時期、明治20-30年代頃には、高学歴エリート青年たちがキリスト教に強い関心を抱いて聖書を読んだり、座禅に取りんだりなど、宗教に自己変革の手がかりを求めていた時代だった
  • 明治20年代はまた、「修養」が、近代社会に相応しい人間になるための自己教育や訓練としても用いられ、次第に、形式的な修身教育に代わって、主体的に精神や人格の向上をはかる理念となっていった時期でもあった。
  • 41「日露戦争後、明治38年頃から40年代にかけて、修養を説く書が雨後の筍のごとく現れた。修養ブームの到来である。」

5. 成功ブームと金銭的成功

  • というわけで、大正期になると『西国立志編』の読まれ方も変わり、新時代の成功書として読まれるようになりました。
  • 成功雑誌社『成功』(村上俊蔵)
    • 『成功』は、『実業之日本』と並んで立身出世を目指す青年たちの愛読書になりました。
    • 夏目漱石『門』の宗介が歯科医院の待合室で手にとったのもこの雑誌です。

6. 近代日本とニューソート人気

  • 村上俊蔵の雑誌『成功』は、オリソン・スウェット・マーデンが創刊した自己啓発雑誌『SUCCESS』をモデルにしていた。明治から大正期の日本で、マーデンの人気は絶大だった。
    • 43「明治日本で最も広く読まれた西洋書は、彼[マーデン]の邦訳書だともされ*、…彼の著作が立て続けに翻訳された。マーデンの本の出版を数多く手掛けたのは、村上の成功雑誌社と実業之日本社だ。」
  • 44「同じくニューソート系のラルフ・ウォルドー・トラインの翻訳書も明治末から昭和初期にかけて多数刊行されており、戦後の自己啓発に連なる成功とポジティブ志向は、戦前の日本で既に大きな盛り上がりを見せていたのである。マーデンやトラインが説いた成功とポジティブ志向は中村や生長の家谷口雅春に大きな影響を与えており、現代の自己啓発の源流もそこに見いだせる。」

7. 『実業之日本』と新渡戸稲造

  • 44 新渡戸稲造明治42年から3年間、『実業之日本』の編集顧問を務め、その後も同誌に多くの文章を寄稿しました。
    『修養』(1911)と『世渡りの道』(1912)は、どちらも『実業之日本』の連載をまとめたものです
  • 44「英才を育成する第一高等学校(一高)の校長、東京帝国大学の教員というエリート知識人・新渡戸の修養論は、大衆文化の中で発信されたものなので。位置項の門下生や同僚たち(エリート)は、彼が大衆雑誌に関わることを痛烈に批判したし、心配もした。それでも彼は、働く青年たち(ノンエリート)に向けて、実践的な処世訓や世渡りの術を説き続けた。十分に教育を受けられなかった青年たちの修養が、なりふり構わぬ金儲けや立身出世に向かうことへの危機感が、彼にはあった。」

大正教養主義へ。

8. 修養のゆくえ


藤谷千明「学びの場か、信者ビジネスか......注目集める仕組みのいま オンラインサロンに人は何を求めているのか」

  • 1.  年の動きと流行
  • 2. 学びの場? それとも?
  • 3. 利用者側の視点
  • 4 . 五つの分類から見えるもの:①ファンクラブ型、②新しい働き方型、③情報型、④コミュニティ型、⑤物語型
  • 5. 運営者側の視点
  • 6. 曲がり角に立つオンラインサロン



福間良明「青年学級、大学、そして司馬遼太郎ブーム 格差ゆえに教養が求められた時代」

1. 「教養」を求めた勤労青年

2. 大衆教養主義の時代

  • 【話法】実利を超越した教養

3. 進学をめぐる鬱屈

  • 昭和初期:旧制中学・高等女学校への進学率は1割
    1950年代なかば:高校進学率は5割
    • 「なぜ自分は高校に進学できないのか」
      →「受験や就職のための、目先の実利のための勉学ではなく、真実の教養・ほんとうの生き方を模索したい。」
  • 【表現】背伸びの文化

4. 「教養への憧慢」の衰退

  • 高校進学率
    1965年 7割
    1970年 8割
    1974年 9割
    →高校進学は、家計ではなく学業成績の問題に変わった。
    →「学歴に恵まれないにもかかわらず、教養を模索する」話法の消滅
  • 大学進学率
    終戦前後 23%
    1970年  23.6%
    1975年  4割弱 →マスプロ授業の一般化→大学への失望→大学紛争

5. 「昭和五十年代」の歴史ブーム

  • 昭和50年代。教養主義の衰退の傍ら、大衆歴史ブームがやってきた。
  • 51 司馬遼太郎の小説は、「サラリーマン層をはじめとるす多くの読者を獲得した。それは目先の仕事の成果には直結しないが、そこでの歴史像・人物像を通して、組織のあり方や自己の振る舞いを考えさせるものであった。」

6. 「かつての若者」の中年文化

  • 51 「だが、勤労青年のようなノンエリート層はもとより、大学においても教養祝儀が衰退したなか、なぜ、「歴史(という教養)を通じた人格陶冶」が見られたのか。そこには、主要読者が中年層であったことが関わっていた。『プレジデント』の読者層はあきらかに企業や工場の管理職層であったし、『歴史読本』など大衆歴史雑誌の読者も中高年層が中心だった。司馬遼太郎歴史小説には若い読者も少なくはなかったが、サラリーマン層の支持は根強かった。そうした中年層は、かつて若い頃に最高潮期の(大衆)教養主義をくぐった世代でもあった。たしかに日常の仕事・生活に追われるなかで、一時的に「教養」から遠ざかることはあったかもしれないが、それでも教養主義的な関心が彼らのなかで消え失せたわけではなかった。生活がある程度安定し、再び「教養」に向き合おうとした先に見いだされたのが、「歴史」であった。」
  • 51 「それにしても、なぜ「歴史」だったのか。そこには「参入障壁」の低さがあった。」

歴史でワンチャン

  • 52 まとめ 「「昭和50年代」の中年文化は、「昭和20・30年代」の若者の大衆教養主義の名残でもあった。」

7. 人格からスキル、資格の重視へ

  • 52 ここ面白いね。
    「さらに、バブル経済期を経て2000年代に入ると、「歴史(という教養)を通じた人格陶冶」という価値観は後景化した。『プレジデント』の変化はそれを物語っている。」…
    「終身雇用と年功序列が前提にされていた昭和後半期(とくに1960年代以降)では、一定の年齢に達したら「リーダー」…になることが見込まれただけに、それにふさわしい「人格」を身につける必要性は企業人たちの間で共有されていた。しかし、…雇用の不安定さだけではなく、大企業でさえ深刻な経営危機にさらされることが明らかになると、条件のよい企業への転職や起業に人びとの関心が向かうのは当然である。そこでは、長期的に会社にとどまることを前提にした「組織人としての振る舞い(人格)」よりも、転職可能性に直結する「スキル」「資格」が重視されやすい。」

ごもっともです。

8. 「格差と教養」という問い

  • 53 「今日の日本の大学進学率は約50パーセントだが、大学に進まない残る50%の教育・教養の問題は、ともすれば見過ごされている。」



牧野智和「「技術知・実務知、歴史的人物、自分らしさ...... 「ビジネスマンの教養」の系譜と現在」」

1. 「中央公論経営問題』の変遷──知の振れ幅の縮小

  • 雑誌『中央公論 経営問題』は、1962年2月に刊行された『中央公論』の臨時増刊号『中央公論 経営問題特集号』が好評を得たため、それを受けて同年10月に季刊誌として刊行されることになったもの。

2. 後続 「Will」へ──歴史的人物・財テク論から自己啓発

3. 「自分らしさ」と女性向け自己啓発

4. 男性向け自己啓発書の二層構造



隠岐さや香「「大きな物語」が喪失した時代 新たな知の共同体を作れるか」

1. 学生に足りない「社会的な視野」
2. 教養が死んだ後の世代
3. 教養は大学内部でも共有できない
4. 専門分野の情報爆発
5. 教養は役に立つのか
6. 議論や交流から始める教養のあり方



読書猿「運命から自身を解放するために 独学のススメ」

1. 「自分の評価を健全に下げる」

2. 人はなぜ学ぶ

  • 独学者とは:機会も条件も与えられないうちに、自ら学びの中に飛び込む人
  • 70 「「人はなぜ学ぶのか」という問いに、私は「自由になるため」だと答えています。」

これは賛成。

  • 70 「知らず知らず教え込まれて身につけてしまった知識や技術が本当に正しいのか、今自分がなんだかよくわからないままに苦しいのは、これまで身につけた知識やものの見方のせいではないか。自らの知識を疑い、その呪縛から逃れるために、人は自覚的に学ぶ必要があるのだと思います。」

わたくしが『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』で「思想の管理」と呼んだものですね。

3. モチベーションを支える集団

  • 71 「人間には体温を維持する機能はあっても、意思を維持する機能はない。だからこそ、モチベーションをマネジメントする様々な技術が必要になります。」

これ面白いな。
私が「思想」をマネジメントの対象だと考えているのに対して読書猿さんは「モチベーション」にこの言葉を使う。他方、私の方は「哲学の講義」では、モチベーションの話は決してしないことに決めています。人類には、何かをするのにモチベーションが必要であるような魂のステージから早く卒業していただきたいですね。
ところで、行動科学が前提しているのは まったくもって「弱い人間」なのに、それをポップ心理学として取り込んだ自己啓発が「強すぎる人間」を前提かつ目標として置いてしまうのには捩れがあるね。これはどういう理屈なのかな。

4. 源流となった修養

5. 生まれ育ちから自身を解放する

  • 74 「私は、教養を「運命として与えられた生まれ育ちから自身を解放する力」だと捉えています。」

これも、主張内容には基本的に賛成なんだけど、これ、直前に書いてあることとの関係が微妙ですね。①教養(パイデイアとしての)と②教養2(近代ドイツの)を区別したうえで、①を取って②を捨てているのでしょうが。しかし、日本語圏では、ドイツ語からの輸入語としてながいこと「教養」概念を使ってきてしまった以上、そこを拾ったり捨てたりするのは無理じゃないかなぁ。

  • 73 「「役に立たない」ことを誇る教養主義が無視し捨て去るものとは、古代ギリシア以来、教養の概念を養い培ってきた人文知の伝統が、実践知に由来するものであるということです。」

由来を辿ればそうなのかもしれないけど、日本において人文知が実践知と結びつけて導入し・理解し・使うという伝統を我々日本語圏の人間は持っていないので、これも無理筋ではないだろうか。
なんでこんなに「人文知」に肩入れできるのか分からないなぁ。それって「現実には存在しないもの」へのコミットメントになってないですか?
「古い言葉を、その意味を変えながら使い続ける」という仕草自体が旧いヨーロッパの人文学的なものであるような気もするけど、私は、別のものを模索し・指示したいなら、そういうやり方自体をやめて、それに相応しい別の言葉を使って欲しいと思います。

7. 学ぶことは危険に身を晒すこと

「教養というのは役に立たないものだし、まさにそのようなものとして(日本では)求められてきた」という方が歴史的実情には近いし、まずは「どうしてそうだったのか」の話からしないと議論は難しい気がしますね。

今月の50冊

  1. Zweckbegriff und Systemrationalität uber die Funktion von Zwecken in sozialen Systemen (Suhrkamp Taschenbuch Wissenschaft 93) Niklas Luhmann 0p ISBN:3518076124
  2. Funktion der Religion Niklas Luhmann 328p ISBN:3518280074
  3. Liebe als Passion. Zur Codierung von Intimitaet Niklas Luhmann 230p ISBN:3518067478
  4. Probleme der Form Dirk Baecker 291p ISBN:3518286692
  5. Das Recht der Gesellschaft. by Niklas Luhmann (1995-05-31) 0p ISBN:B01N0W8P25
  6. Die Gesellschaft der Gesellschaft Niklas Luhmann 1164p ISBN:3518289608
  7. Die Wissenschaft der Gesellschaft Niklas Luhmann 732p ISBN:3518286013
  8. Die Gesellschaft der Gesellschaft Niklas Luhmann 1164p ISBN:3518289608
  9. Die Kunst der Gesellschaft Niklas Luhmann 517p ISBN:3518289039
  10. Gesellschaftsstruktur und Semantik 2: Studien zur Wissenssoziologie der modernen Gesellschaft Niklas Luhmann 294p ISBN:3518286927
  11. Gesellschaftsstruktur und Semantik 3: Studien zur Wissenssoziologie der modernen Gesellschaft Niklas Luhmann 458p ISBN:3518286935
  12. GLU: Glossar zu Niklas Luhmanns Theorie sozialer Systeme Claudio Baraldi 248p ISBN:3518288261
  13. Bourdieu und Luhmann: Ein Theorievergleich Armin Nassehi 271p ISBN:351829296X
  14. Die Selbstorganisation der Wissenschaft Wolfgang Krohn 146p ISBN:3518283766
  15. 適応合理主義 ガストン・バシュラール 352p ISBN:4772000712
  16. はじめてのジョナサン・エドワーズ ジェイムズ バード 256p ISBN:4764266873
  17. 今日の宗教の諸相 チャールズ テイラー 133p ISBN:4000225707
  18. 聖なるもの (文庫クセジュ) ジャン=ジャック・ヴュナンビュルジェ 170p ISBN:4560510180
  19. ウェーバーマルクス カール・レヴィット 165p ISBN:462401006X
  20. 学問とわれわれの時代の運命 (フィロソフィア双書) カール レーヴィット 127p ISBN:462402026X
  21. バウムガルテンの美学:図像と認識の修辞学 井奥 陽子 288p ISBN:476642655X
  22. 官僚制 マックス ウェーバー 90p ISBN:476990598X
  23. 社会的行為の構造 第4分冊 タルコット・パーソンズ 256p ISBN:4833221411
  24. 社会的行為の構造 (第5分冊) タルコット・パーソンズ 263p ISBN:483322142X
  25. 社会構造とパーソナリティ タルコット パーソンズ 492p ISBN:4787711059
  26. アメリカ人の生活構造 W.L. ウォーナー 257p ISBN:4895213021
  27. 分類の未開形態 (叢書・ウニベルシタス 99) エミール・デュルケーム 217p ISBN:4588000993
  28. シティズンシップと社会的階級-近現代を総括するマニフェスト T.H. マーシャル 233p ISBN:4589017555
  29. 近代化の政治社会学 (1968年) S.N.アイゼンシュタット 0p ISBN:B000JA56IM
  30. ソーシャル・マジョリティ研究: コミュニケーション学の共同創造 綾屋紗月 297p ISBN:4760826688
  31. デザインから考える障害者福祉 -ミシンと砂時計- 海老田 大五朗 190p ISBN:4904380908
  32. マルジナリアでつかまえて 書かずば読めぬの巻 山本貴光 320p ISBN:4860114450
  33. ユリイカ 2020年12月号 特集=偽書の世界 ーディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書までー 馬部隆弘 373p ISBN:4791703944
  34. 偽史政治学:新日本政治思想史 河野 有理 252p ISBN:4560095280
  35. 引き裂かれた人間引き裂く社会 ヤン・ヘンドリック・ヴァン・デン・ベルク 310p ISBN:4326100613
  36. 当事者が支援する--薬物依存からの回復 ダルクの日々パート2 南保輔 272p ISBN:4861105846
  37. 愛する人を所有するということ (青弓社ライブラリー) 浅見 克彦 209p ISBN:4787231863
  38. 新選谷口雅春選集 9 幸福はあなたの心で R.W.トライン 286p ISBN:4531010590
  39. 普遍論争 近代の源流としての 山内 志朗 478p ISBN:4582766307
  40. 柔道整復の社会学的記述 海老田 大五朗 247p ISBN:4326603127
  41. 災害・支援・ケアの社会学--地域保健とジェンダーの視点から 板倉有紀 288p ISBN:4865000879
  42. 現代思想 2021年1月号 特集=現代思想の総展望 2021 入不二基義 254p ISBN:4791714083
  43. 現代美術史-欧米、日本、トランスナショナル中公新書) 山本 浩貴 318p ISBN:4121025628
  44. 証言の心理学-記憶を信じる、記憶を疑う (中公新書) 高木 光太郎 202p ISBN:4121018478

借りもの:自己啓発講義/『道徳感情論』読書会

8/17まで。

www.youtube.com

何をどうすると都市社会学になるんですか問題

夜のお仕事準備。昨年9月の続き。
contractio.hateblo.jp

都市社会学、もしかしてパーフェクトな研究領域なのではないか。

『祝祭都市―象徴人類学的アプローチ』

都市社会学disが載っていると聴いて読んでみたところ、くだらない難癖すぎた。

巻頭「想像力の中の地下都市」冒頭:

  • A──都市についての関心はいつ頃から持ち始めていましたか。
  • B──都市そのものではありませんが、1963年頃、国際基督教大学で助手をやっていたとき、都市社会学及びそれに熱中する社会学の学生たちを見て、都市社会学というのはつまらない学問分野だなと思ったことがあります。
  • A──どうしてそんな印象を抱いたのでしょうか。
  • B──この分野が、単純な経験主義の視点にもとづく当時のアメリカの計量的方法の影響を最も強く受けていたせいでしょうかね。
  • A──それ自身歓迎すべき方法だったのではないですか。
  • B──ところが、この方法は、基本的に、計量可能な方法を中心にしか社会的現実を捉えることをしない。計量可能な方法で捉えうる現実とは、その実効的な側面に限られてきます。それ故、都市社会学はどちらかというと、都市計画とか都市の福祉といった、快適性を前提とする分野に視点を限るようになったように思われます。
  • A──その視点は、あなたの社会学についての一般的な見解にほぼ一致しますね。そういう視点で視ると都市のどういった側面が抜け落ちるのでしょうか。
  • B──先ずはっきり言って、都市の可視的な部分はよく見えるけど、不可視の部分はますますよく見えなくなるのではないでしょうか。
  • A──あなたの現実の多層性についての考え方が、そうした見方に無関係ではないでしょうね。
  • B──そうですね、都市社会学的な視点の最大の欠陥は、現実を生活の実効的な側面に限定することにあったのでしょうね。ところが都市は、その中に生きる人間の意識のあり方によってさまざまの相貌を示すものです。だから、計量的方法によって捉えられうるのは、そのごく一部にすぎないという自覚が、そういった方法に携わっていた人には欠けていたようです。
  • A──たしかに都市については、いろいろな分野から捉えられはじめていた。特に映画が都市の不可視の部分に投げかけた光は大きかったと思いますが、いかがですか。
  • B──当然のことながら、都市の動的な側面、そして移行することによって見えてくる都市を示したという点で、映画の果たした役割は大きかったと言えるでしょう。
  • A──映画の中でも20年代表現主義は都市の影の部分を描くのに長じていましたね。

「見える/見えない」と「光が当たる/当たらない」を混用するのやめろ。



巻末「ポスト・スクリプトゥム」[304]

  • A──祝祭都市探索の長旅もやっと終わりましたが、都市については長い間こだわっていたようですね。
  • B──そうですね。誰でも都市について一言あるとは思いますが、社会科学で都市を捉える視点・モデル・概念が、どうもすっかり衰弱してしまったという印象を多くの人が抱いています。何とかしなければと、長い間考えていました。

昭和だから仕方ないか。

有末 賢(1993)「「都市論と都市社会学」に参加して」

34

「盛り場」という場は、都市空間の中に「位置づけられ」、集積されることによって「盛り場」としての「意味」が付与されるのであるし、逆に「盛り場」の意味としての娯楽、消費、祝祭性なども、「位置づけられ」ることによってはじめて社会の場に登場してきたのである。すなわち、時間・空間の「媒介性」こそが文化研究の中で問われているのではないだろうか。文化は生産・消費の様式や人々の「意味づけ」にかかわっている。日本における大衆消費社会は、都市空間を「位置づけ-意味づける」うえで重要な「媒介性」を有している。このように考えてくると、都市社会学者が都市化-郊外化、インナーシティ問題、ジェントリフィケーション、世界都市化などにおいて考えてきたものも、すべて〈社会〉と〈空間〉の「媒介性」を問題としてきたとも言えるのである。

ぜんぜん意味がわからなくてすごい。

町村(2013)「都市社会学という「問い」の可能性」

[11] 日本の都市社会学は、学会設立の当初から、皮肉にもその内部に「アイデンティティ問題」を抱えていた。なぜなら、1982年に日本都市社会学会が設立された頃、学問の制度化を大きく後押しした「都市化」という大規模な変動は、すでに終わりを告げつつあったからである。

お買いもの:アダム・スミス(1759)『道徳感情論』

読書会用。



  • 読者に

第一部 行為の適宜性について

第二部 値打ちと欠陥について、あるいは報償と処罰の対象について

第三部 我々自身の諸感情と行動にかんする、われわれの判断の基礎について、および義務の感覚

第四部 明確な是認の勘定に対する効用の効果について

第五部 明確な道徳的是認及び否認の諸感情にたいする、慣習と流行の影響について

第六部 道徳哲学の諸体系について

部構成

スミス『道徳感情論』部構成
スミス『道徳感情論』部構成