第3章「馴れ親しみと信頼」

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第3章 最後の段落。訳37-38

  1. 馴れ親しみ
  2. 人格への信頼
  3. 人格システムへの信頼・社会システムへの信頼

という類型。

 信頼という、我々の特殊な問題に関して言えば、右のような一般的な診断によって〔信頼の〕様式は、より大きな、自覚的に処理される複雑性に向かって変化していくという推測が与えられる。

 以下の章について予告しておくと、かかる推測は、以下の順序で素描される。

  • 【1】信頼は、まず、日常的な世界への馴れ親しみを基盤として、さしあたり人格的な(従って制約された)信頼である。
    • この場合、他の人間の振舞に含まれる不確実性の要素は、対象[=物]の変化の予測不能性と同様に体験されるのだが人格的な信頼はそうした他人の振舞に含まれる不確実性の要素を埋め合わせる働きをする。
  • しかし次第に〔社会システムの〕複雑化〔つまり内部分化を伴う高度化〕の必要が増大し、他者が他我として、つまり〔システムの〕複雑性とその縮減を共同で引き起こす者として、視野に登場してくるようになると、信頼は拡大され、かの本源的な・問題の余地なき世界の馴れ親しみを押し退けねばならなくなる。しかし信頼はかの馴れ親しみにとって代わるわけではない。信頼は、新たな種類の・システムヘの信頻へと変化するのである。
  • 【2】システムヘの信頼は、自覚的にリスクを冒してでも、可能なさらなる情報〔の収集〕を断念するだけではなく、〔諸種の差異に対して〕これまで有効であった無差別的態度や、また目下採用されているところの結果の制御〔の仕方〕をも放棄することを含意する。システムヘの信頼は、たんに社会システムに向けられるだけではなく、人格システムとしての他の人間に対しても向けられる。
  • 信頼を実際に示す様式の内的な前提に注目するならば、信頼の基盤が、第一次的には情緒的なものから、第一次的には呈示〔表現〕に結び付いたものに移行するのは、こうした変化に対応しているのである。