信頼の規定と内的条件について。
53 最後から二番目の段落。
- この章の目的は、一章で予告した「信頼の準拠問題が複雑性の縮減である」という主張を、信頼の三つの内的契機に即してしめすことだった。
- この章では併せて、ここで謂う「複雑性」が、他人が有する自由から生じるもの(=社会的複雑性)であることが示された。
01 |
| ||
02 | [希望と信頼の違い] |
| |
03 | [信頼と計算(衡量)] |
| |
04 | [経済学的(割引率的)決定理論] |
| |
05 | 信頼による「複雑性の縮減」の1:
| ||
06 | 信頼による「複雑性の縮減」2:成果の前払い
| ||
07 | [情報の過剰利用と内的安定性] |
| |
08 | [学習心理学における汎化の理論] |
| |
09 | 予期の一般化1: 問題の内部化 |
||
10 | |||
11 | |||
12 | |||
13 | |||
14 | 予期の一般化2: 学習 |
||
15 | |||
16 | 予期の一般化3: 象徴化 |
||
17 | |||
18 | |||
19 | |||
20 | |||
21 | |||
22 | 以上のような意味で、信頼の参照問題は複雑性の縮減である | ||
23 | 問題が特定されたら、解決の形式と派生問題について検討すべきである |
39頁
いまや我々としては、信頼の問題をいっそう明確に規定して、リスクを賭した前払いの問題として捉えることができる。
世界は、もはや制御不能な複雑性にまで拡大しており、その結果、他の人々て減
は如何なる時点においても自由に多様な行為を選択しうるに到っている。しかし、この私は今・ココで行為しなければならない。他者がなにを行うかを観察し、それにもとづいて自分の態度を決めていくには、観察し態度を選びうるための時間は短い。その時問において把捉して消化しうる複雑性はほんの僅かであり、従ってそこで獲得されうる合理性もごく僅かである。
- [協働的行為]しかるに、もし私が、他者の未来の規定された行為を(あるいは現在、過去の、いずれにせよ私にとっては未来になってようやく確定可能な行為を)信頼しうるならば、複雑な合理性へのチャンスはもっと多くなるであろう。もし私が利得の分け前が自分にも与えられることに信頼を持っているならば、私は、直ちには、また私に直接に関わる範囲では何の利益にもならないような形式の協同活動にも参与しうる2。
- [協調的に遂行される個別的行為] 他者が私と調子を合わせて行為する、あるいはそれを思いとどまるということを当てにしうるならば、私は自分自身の利害関心をより合理的に追求できる。例えば、道路交通においても、より円滑に運転できるのである3。
参照文献
- n.02 協同的行為:「すぐに利益を得られない関係における協同」に関する実験。[D] 1960
- n.03 協調的に遂行される個別的行為(囚人のジレンマ実験):[D] 1958
- n.04 経済学的な、客観的で無時間的な考察方法、計算可能性:利得・コスト計算と信頼との違い
- n.05 官職への任命・資本信用:
- D. Braybrooke 1964, S. 542ff The Mystery of Executive Success Re-examined Administrative Science Quarterly ; Mar 1964, Vol. 8 Issue 4.
https://www.jstor.org/stable/2391431 - Geoffrey Vickers 1965, S.180. The Art of Judgment: A Study of Policy Making (Rethinking Public Administration) ISBN:0803973632
Vickers は ch7 n16 に再登場する。
- D. Braybrooke 1964, S. 542ff The Mystery of Executive Success Re-examined Administrative Science Quarterly ; Mar 1964, Vol. 8 Issue 4.
- n.07 自尊心と社会的正当化としての「理由」: 197頁以下
- n.12 学習:
- n.14 学習と信頼:[D] 1958. 「信頼を寄せる態勢 と 信頼に値すること とは統計的に相関する(=他人を信頼する人は信頼に値する)」仮説