2 目的機能

pp.128-131 「複雑性と変動性の吸収」に対する機能的に等価な諸戦略

  • a 主観化
  • b 制度化
  • c 環境分化
  • d 内部分化
  • e システム構造、規定性の度合い

p.132 これらを使った目的概念の再定式化

  • (a) 目的とは、未来の結果についての主観的な観念である。主観的だというのは、事実の経過についての予期だという意味だけではない。システム自身の力をどれくらい投入する価値があるのかを見定めるという点でも、主観的なのである。
  • (b) 目的は行為の基礎として、あるいはその結果としても、制度化されうる。つまり、環境の側で直接的な当事者以外によって、承認され支持されうる。
  • (c) 目的を環境分化に適合するように特殊化することも可能である。目的を環境の特殊な一部にのみ関連するようにすればよい。その部分が目的を承認し支持することもあるし、逆に目的が効果としてそれらの部分に押しつけられる場合もあるだろうが。
  • (d) 目的は内的分化の原理としてはたらく。すでに述べたように、この発想は古典的組織学説の中心に位置するものであった。
  • (e) 目的がもつ規定性の程度は可変的である。目的を、成功についての一般的で直接には使用できない観念にとどめておくこともできるし、逆に経験的な結果として正確に示すこともできる。目的は、システムと環境のあいだのコンセンサスを特殊化するのに役立つのだ。

以上のようにして、システムが存続するためには考慮されねばならない環境の複雑性と変動の見込みが縮減されるのである。

要約

p. 132

  • 目的は、システムの環境における複雑性と変動性の吸収という問題に関して、多くの相を媒介する機能を担っている。目的は多様な仕方で、にもかかわらず統一的に、この機能に奉仕する。それゆえに目的は──この点で正当な支配という役割とパラレルなのだが──調整する一般化と見なされうる)。
〔ここにいう「一般化」がどういう意味かというと〕
  • 目的は予期なのであって出来事ではない。目的が向かうのは抽象によって選び出された効果であり、具体的な状況ではない。
    • こうして具体的な事象に対して距離が取られる。この距離のゆえに、さまざまな欲求を公分母の上に乗せることが可能になるのだ。
  • 目的は未来の、つまり時間的に離れた状態に注目する。
    • かくして、目的が実現されるに至るまでの時間の隔たりに対する備えがなされる。それによって、目的追及という一般的な視点のもとで、競合する問題および状況から課せられる諸要求を満たすために、きわめて多様な措置が取られうるのである。
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オポチュニズムと一般化のジレンマ

p.142

目的/手段図式がもつ本質的な難点は、それがどの程度のオポチュニズムを内包できるかという点に関わっている。

だがこの難点が行為理論のなかで浮上してくることはない。絶対的、合理的ないし道徳的な行動法典への違背、すなわち行為を直接に規格化するような法典への違背という見地から、この難点をとらえることはできない。この難点が明らかになるのは、システム形成という問題から見てのことである。それゆえに、合理的あるいは倫理的な行為理論によって、目的/手段図式の難点を適切に論じることはできない。

この問題はシステム理論に属している。というのはシステム理論のみが、十分に複雑な基礎概念からなる準拠枠を使用できるからである。

  • ある結果に関して目的を固定し、一面的な価値判断および価値中和を安定化させる――これらのことに関心を抱きうるのは、システムのみである。
  • プログラムを固定するためにはどんな条件が必要であり、またそれにはどんな限界があるのか。また、
  • プログラムを固定することのうちにはどの程度の「不法」が含まれているのか。
行為のレベルでこれらの問いに答えようとするならば、失敗するか、あるいは結果を先取りした根拠のない前提へと逃げ込まざるをえなくなる。

これらの問題のために十分なほど複雑なモデルを提出できるのは、システム理論のみである。「オポチュニズム」および「一般化」という概念は、システム理論の概念なのである。

 以下の議論の導きの糸となるのは、オポチュニズムと一般化のディレンマというこの観点である。