涜書:ダ−レンドルフ『経営社会学』

本日のランチ。

  • ラルフ・ダーレンドルフ、『経営社会学』、石坂巌訳、三嶺書房、190頁、1,890円、ISBN:4914906317、1985/08
    • Ralf Dahrendorf, Sozialstruktur des Betriebs - Betriebssoziologie, 1959/1972
  • 1章 経営社会学
  • 2章 経営統合の構造
    • 社会システムとしての経営
    • 分業と恊働
    • 上下関係
    • 非公式グループ
    • 社会-経済的階層
  • 3章 経営紛争の構造
    • 強制団体としての経営
    • 経営紛争の表現形式
    • 経営紛争の原因
    • 経営紛争の規制
    • 経営制度の社会学的問題
  • 4章 経営行動の構造
    • 経営風土
    • 疎外と労働不満
    • 生産性と能率への刺激
    • 「ヒューマン・リレーションズ」の理論と実務
  • 5章 経営と社会
    • 経営と地域社会
    • 経営と全体社会

読了。
まぁ教科書ですよ。だから。(でもさすが先生、簡にして要を得た いい本です。ということにしておきましょうとりあえず。)


 めちゃめちゃ目立った特徴がひとつ。ダーレンドルフは「非公式組織」という名称を使わない。「非公式グループ」と呼ぶ。これはさしあたっては「言葉の問題」でしかないが、ただ、その拒絶の理由から、ダーレンドルフが「組織」(という語の使い方)についてどのように考えているかがわかる(のが面白い)。
 つまり、彼にとっては

    • 「組織Organization」は「システム」とか「官僚制」とか「公式性」と同義

なのであって、そこからすると、

    • 多かれ少なかれテンポラルなものである「非公式グループ」を「組織」と呼ぶべきではない

という理屈になるらしい。これは訳者である石坂巌氏の言葉づかい@『経営社会学の系譜』とも異なっている。
 が、経営組織を

    • 「支配団体」側面と
    • 「協同組織」側面と

の相克からみる、というところは共通していて、「組織」と「システム」という言葉を、それぞれどこに割り振るかが異なっているわけだ。
 ダーレンドルフのほうは、「システム」という語を「組織」とほぼ互換的に用い(=「公式的・支配的」な側面に限って使用しようとしており)、石坂巌氏のほうは、「協同組織/支配団体」の双方に「システム」という語を用いようとしている。ということ。
 てことで──つまらないまとめ方をすれば──、両者の違いは、「システム」という語を、「孤立系」の意味で用いるか「開放系」の意味で用いるかの違いであるようだ。

石坂本では、ルーマンを介して「システム」という語を導入しているので、こうした違いが生まれてきた、のかもしれない。
ただし、氏の語用がルーマンのものと一致している、とまで言っているわけではない*。念のため。



* 少なくとも、ダーレンドルフにも石坂氏にも共通に「欠けている」*1観点があるし。すなわち、組織成員は組織の環境にゐるという観点、これである*2
これは、ルーマンの著名な──というか悪名高い──テーゼ「人間はシステムの環境にゐる」の最初期ヴァージョンだといえるか。『公式組織』の時点[1964]ですでにルーマンは、組織環境を論じる際に「非成員環境」
「非成員は組織の環境にゐる」、というこちらのネタは常識的かつ自明だが、それ
だけでなく、「成員環境」についても論じていたのだった。
ダーレンドルフはそこ読んで、「こいつDQNか?」と思った、に、20ペソ。

*1:という表現が悪ければ「採用はしなかった」

*2:(略)