いただきもの:木村(2011)「職場と会社の齟齬」

どうもありがとうございます。

ルーマンエスノメソドロジーを参照した経営管理論の論考である模様(また論文要旨しか読んでない)。

『公式組織の機能とその派生的問題』、刊行30年後に付されたエピローグの邦訳付き。
  • 木村達郎(2011)
    「職場と会社の齟齬:経営組織における実践の解釈主義社会学的考察」
    (博士学位論文、埼玉大学大学院 経済科学研究科)
  • 序 章 職場と会社の齟齬
  • 第1章 経営組織論における秩序問題のありかた:制度派組織論
  • 第2章 職場で何が行われているか:状況論
  • 第3章 組織とは何か:初期Luhmannの組織論
  • 第4章 調査方法論としてのエスノメソドロジー
  • 第5章 経営組織における実践の分析
  • 終 章 結論と含意
  • 付 録 1994年のエピローグ(Niklas Luhmann著、木村達郎訳)
(序文冒頭)
 本論文が取り上げる問題は、社員が職場において日常的に直面する会社との齟齬である。職場と会社の齟齬は、会社の方針が職場での実感にそぐわないと思わされるようなできごととして体験される。従来は経営戦略の実行上の課題にすぎないとされてきたが、経営学がどのように企業活動の現場に対する有用性を持ちうるかに関わる重要な研究課題である。
 経営管理の理論には、「管理されない限り,経営組織は秩序と合理性を維持できない」という前提がある。本論文ではこの前提を「組織のホッブズ問題」と呼ぶ。組織的合理性の視点から個人の行為を非合理的と判定し、最終的に組織的合理性に回収する方法で秩序問題の解決を図ろうとするなら、職場と会社の齟齬を生みだしこそすれ、解決の手がかりにはならない。その代わりに「組織の羅生門問題」が問われるべきである。組織の羅生門問題への取り組みは、現実の組織的な構成のされかたを分析するとともに、秩序立った実践が構成されるうえで組織が持つ機能と、それがどのように組織成員に職場と会社の齟齬を感じさせているのかを明らかにする。そのようなアプローチは、解釈主義社会学への依拠によって可能になる。
 本論文の目的は、経営管理の規範的・因果論的な視点とは異なる、解釈的・現象学的な組織的実践の分析を高度な理論水準において行うとともに、当事者である組織成員に省察への取り組みを提起することである。調査と分析の具体的な方法論は、エスノメソドロジーに依拠する。