涜書:フーコー『知の考古学』

朝食後半。「フーコー最大の失敗作」との呼び声も高い:

第III章の2節で「言表の4機能」についての議論が展開されたあと、3節のここ↓で、それが第II節の「4要素」と関係づけられている:

そのなかで人々がそれを分析する
四つの方向
(対象の形成=編成、主体の位置の形成=編成、概念の形成=編成、戦術的選択の形成=編成)
は、言表機能が行使される四つの領域に対応する。[p.177]
The four directions
in which it [=discours] is analysed (formation fo objects, formation of the subjective positions, formation of concepts, formation of strategic choices),
correspond to the four domains in which the enunciative function operates.[p.130]

しかし、ここをみるとむしろ/やはり、言表-と-4要素 の双方に同じ術語を述語づけることに対する疑念はさらに深まるのだが...。

「そのなかで人々がそれを分析する四つの方向」は謎訳。「言説が分析される際に目指される 対象・類型・概念・戦術 という四つのdirection*」くらいのところか。
ちなみにこの著作で「人々on」が主語になっているときには、それは──いくつかの数少ない例外を除き──【考古学プロジェクト】のことを指す、と考えてよいようです。
* direction には、「見出し」の意あり。私としてはつい、かつてフッサールが「地平」概念の含意の一つとして用いた「手引きLeitfaden機能」という言葉を思い出してしまうところ。
あるいは──EM者のキャッチコピーを用いていえば──、第II章の議論は、「通常は〈リソースとして〉用いられている4要素を〈トピックとして〉扱え」、といっているようにも聞こえるのだが。どうか。



ところで、ここで「correspond to」という非常に強い表現が使われていることが気になるんだけど、これは原著ではどうなっているのでしょう。>お持ちの方

「correspondre à」。コメント欄にてご教示いただきました。ありがとうございます。三省堂クラウン仏和 http://www.sanseido.net/

correspondre
(→活用42・〈過分〉correspondu)〈自〉

  • [1]《à,と,に》一致する, 対応する, 相当する.─Cela ne correspond pas à la réalité. それは現実と合わない.
    s'accorder.
  • [2]《à,avec,に》つながっている, 連絡している.─levier qui correspond aux freins ブレーキにつながっているレバー. Ces deux mers correspondent par le canal de Suez. この2つの海はスエズ運河で結ばれている. Cet omnibus correspond avec l'express à Lyon. この普通列車はリヨンで急行と接続している.
    communiquer.
  • [3]《avec,と》文通する, 連絡をとる.─Il a cessé de 〜 avec nous. 彼は我々との文通をやめた.

━━ se correspondre 〈代動〉

  • [1] 一致する, 対応する, 照応する.
  • [2] 通じ合う, (互いに)つながっている.



いや−しかし。中村大先生の翻訳って、噛めば噛むほど味わい深い、ほんとにどうしようもないものですな。
そういや、ベルクソン全集にはいってるやつもヒドかったなぁ.....(遠い目)