東北大学でやってる ニクラス・ルーマン『社会の法』読書会 のMLに投稿したもの。
『社会の法〈1〉 (叢書・ウニベルシタス)』第2章:
11世紀から12世紀においてすでに、法文化総体の《革命》というかたちで、法システムは自律の方向へのこの [法的準拠問題に定位したコミュニケーション-の-法的コード化 という] 転換を遂げてしまっていた。その証拠は ハロルド・バーマンによって集められている38。他の文明圏と比較してみれば、そこからヨーロッパの《逸脱》が説明できることがわかるだろう。すなわちヨーロッパでは、社会の中での日常生活と全体社会の発展にとって、法がまったく異例ともいえるほどの重要性をもっているのである。 [p.61-62]
注38 でルーマンが参照しているのはドイツ語訳だけど、原著はこちら:
Law and Revolution, I: The Formation of the Western Legal Tradition
- 作者: Harold J. Berman
- 出版社/メーカー: Harvard University Press
- 発売日: 1985/01/01
- メディア: ペーパーバック
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これ、翻訳が出ていてまったくおかしくない重要な本ではないかと思うのですが。ないんですねぇ...。
紀要などに部分訳は載っているようです。
- 『法と革命』第5章 教会法:最初の近代法・第6章 教会法から派生した様々な近代法:家族法・相続法・財産法・契約法・訴訟法
http://ci.nii.ac.jp/naid/40015664268/ - 『法と革命』「結論」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006572568/
- [紹介]『法と革命 : 法制度における欧米的な伝統とは何か』
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001046285/ - 欧米の法制度とキリスト教の教義
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006141718/
■訳者さまのwebサイト:http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~miyajima/
お、上記のうち、紹介は公開されてますな:
バーマン自身は、1938年にロンドン大学に留学してイギリス革命がイギリス法に与えた影響を勉強したのが、そもそも研究生活を始めたきっかけだと書いているが(4)、戦後に発表された初期の論文は、すべてソ連の法制度紹介になっている。彼も、冷戦開始と同時にアメリカで盛んになったソ連研究の一環を担っていたのであろう。しかし、1960年代になるとソ連の法制度とアメリカの法制度を比較する内容の論文を書き始め、さらに法制度の背景にあるロシア正教会とカトリック教会の教義の違いについて論じ始める。そして1970年代中頃から「欧米(つまり、カトリック教会圏)の法制度がもつ特徴は何か」という、もっと大きな問題に答えようとするようになる。
その成果が、『法と革命』である。1983年にアメリカで出版されたこの本は、1991年にドイツ語に訳され、1993年には中国語、1994年にはイタリア語とロシア語(筆者が手に入れたロシア語版は、1998年に出版された第2刷である)、1996年にはポーランド語とスペイン語に翻訳されており、また2001年にはフランス語にも訳されている(ちなみにフランス語訳は、中央大学の提携校であるエクス・マルセイユ第三大学と協力関係にあるという出版社から出ている)。筆者が最近、入手した英語版の第10刷は1999年に出版されており、この本が出版された当初から欧米で注目され、ながく読み継がれていることが分かる。ところが中国語にまで翻訳されたこの本が、なぜか日本語には翻訳されていない。紹介:ハロルド・バーマン『法と革命:法制度における欧米的な伝統とは何か』
....このあたりまでは普通の「紹介」なんですが。この次あたりからだんだん香ばしくなってきて楽しい文章です。
で、そこは飛ばしまして。
上記ルーマンからの引用文中「革命」と呼ばれているのは、このあたりのこと:
従来、歴史学者が「叙任権闘争」とか「グレゴリウス改革」と呼んできたものを、バーマンが敢えて「革命」と呼ぶのは、それが根本的な変化を欧米にもたらしたと考えるからである。おなじキリスト教会といっても、1050年から1150年の「教皇革命」を経験するまでのカトリック教会と、「教皇革命」後のカトリック教会は別物であるという。また東方正教会は「教皇革命」を経験しておらず、これがロシアの政治や社会のあり方を欧米とは異なったものにしているという。
[...]
6つの革命に共通する特徴としてバーマンが挙げているのは、急激で大規模な社会制度の変革が武力によって実現し、しかも変革の結果が永続的であること、また変革の正統性が「神の定めた法」や「自然法」に求められ(18)、それは過去にあった理想的な状態への回帰を意味し、また同時に終末論的な未来像(理想的な状態の実現は「歴史の終わり」でもある)の実現をも意味するという(19)。社会制度の変革は法制度の変革ということであり、またトマス・クーンのいう「パラダイム(考え方の枠組み)の変革」ということでもある(20)。なかでも「教皇革命」は、ほかの5つの革命と違ってカトリック教会圏全体に影響を与え、影響範囲が民族(のちの国民国家)に限定されていないのが特徴である。また、革命によって社会制度を変革できるという考え方を生み出したのも、「教皇革命」であった(21)。
ここから先のところが「紹介」の本論です。が、以下略。
「教皇革命」についてはこれを読め、ということのようですな:
古書店で一万円するね。こりゃ無理だ。 |
google:グレゴリウス改革+叙任権闘争 すると、こんなのがヒットするね。とりあえず読んどくか。
|
こっちは読んだなぁ。
西欧精神の探究―革新の十二世紀〈上〉 (NHKライブラリー)
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