碓井「パーソンズ・ルーマン・ハバーマスの象徴的メディア論註解」

人外魔境 CiNii、本日の探索。
隊長!勉強する大先生を発見しました! シリーズ論文のうちの「その4」。

碓井たかし(2001)
パーソンズルーマン・ハバーマスの象徴的メディア論註解 :
社会システムにおける集権化と分権化(その4)

金沢大学文学部論集. 行動科学・哲学篇
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000032320
  • 〔序〕
  • 1 記号論とメディア論
  • 2 メディアの名称
  • 3 メディアの類別
  • 4 メディアの機能と効果
  • 5 近代の社会分化とメディア
  • 6 メディアと負担解除・複雑性縮減
  • 7 批判的検討
  • 8 規格化・多様性問題とメディア論の再構成

付録として大先生的「メディア一覧表」つき。いわく「本稿の検討の過程ででてきた試案なので、詳細は、今後検討の課題として、ここでの説明は控える」と。


連載その3。

碓井たかし(1999)
ルーマンにおける目的プログラムと条件プログラム :
社会システムにおける集権化と分権化(その3)

金沢大学文学部論集. 行動科学・哲学篇 19
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000032303
  1. 社会システムにおけるプログラムの問題
  2. 目的プログラムと条件プログラム
  3. ふたつのプログラムをめぐる諸連関(弾力化、入れ子構造、連結化)
  4. 近代国家の法規範と条件プログラム
  5. 結び 二つのプログラムと集権化・分権化

 以下のルーマンの紹介では、原著でもほとんど例があがっていないため、少しでもイメージをもって読みやすいように、二三 例をあげておこう。

  • 目的プログラムの例: 
    • 植民地が独立国家に変わるという目的を狙う場合2、インド独立、アイルランド独立等など考えると、主々の目標達成行為の探索がありうる。
  • 条件プログラムの例:
    • 酒酔い運転という条件があれば、結果として 15点という反則点数を課すことがプログラム化されている。
  • 大学入試の場合: 入試センター試験の出題の多選択法で、AならばBという定型的に選択肢を選んで解答する方式は、条件プログラムということになるが、たとえば 自己のアイディアを出して環境問題の解決策を探索するような出題をすれば、目的プログラムということになろう。[p.22]

どよどよどよ....


■定式

目的プログラムと条件プログラム

 目的プログラムとは、その内容に即して言えば なによりもまず、定式化された問題 である。

ここに条件プログラムとの本質的な違いがある。後者は──少なくとも理念的なかたちにおいては──問題解決の〈計算〉、すなわち基本的にはすでに解決済みの問題を解くメカニズムなのである。これに対して、

目的プログラムは、問題設定という〈索出的〉な機能をプログラミングすることに限られている。問題の解決にかかわる〈決定を考慮〉Entscheidungsüberlegungen する際には、当の問題によって〈脈絡〉Zusammenhang と〈構造〉が与えられる。決定の過程の側から見れば、問題とは〈制約〉begrenzend と〈規格を課す〉disziplinierend 諸条件の複合体に他ならない27。[p.26]

  • 27 ZbSr 190頁(S.260)
両プログラムの連携: 「入れ子」と「組み込み」

 両プログラムの関わり方について、「プログラム入れ子構造」(Programmverschatelung)と「プログラム連結化(組み込み化)」(Programmverbindung)の区別をしている点がある。

  • 入れ子構造化」は、「目的プログラムの枠内で適切な慣例を選択することについての決定」33で、部分的に関連プログラムが「入れ子」を成している場合を解釈できる。単純な目的・手段構造とは異なる「ハイアラーキー入れ子」を成していて、行政の行為はこれによって〈環境依存性〉を増し〈弾力的〉になりうる。
  • 逆に、「連結化」の場合は、慣例プログラムを実行するとき、そこへ、目的プログラムを組み込み、それによって個別のケースでルーティンとして何がなされるべきかを特徴づけようとする34。この場合には、目的プログラムの方が組み込まれるのである。[p.28]

「慣例プログラム」と訳されているのは、「ルーティンプログラム」のこと。

法社会学』における定式: 条件プログラム・複雑性・変異

 要するに、条件プログラムという形式は 〈容量の増大〉Kapazitätserweiterungen を可能にするものである。この容量の増大は、法を実定法へと再編し、それに応じたほうの複雑性を増大させるために不可欠となるものであって、具体的には、〈合理的な変異の原理的に基礎付けられた可能性〉prinzipiell angelegte Möglichkeit rationaler Variation、および、注意力や結果責任や調整のためのコミュニケーションに対する過大な要求からの開放という形をとるものである47。[p.31]

  • 47 Rs 255頁(S.234)

「容量」と申したか。

この項、文意不明瞭。あとで『法社会学』を確認のこと。キャパシティの増大は、
  • 「変異の可能性」や、
  • 「注意力・結果責任・調整などの要求からの開放」
などと相即して実現される、という意味だよね?

■メモ

  • 「Brauchbarkeits(bedingungen)」を「有用性(条件)」と訳しておられる。これは(「最適化」と対比して謂われる)「satisficing (satisfying, satisfactory)」のドイツ語訳。「満足化(条件)」が定訳ですな。

文献

System of Modern Societies (Foundations of Modern Sociology)

System of Modern Societies (Foundations of Modern Sociology)