いただきもの:松沢裕作「日本近代形成期の集団と個人:家・村・窮民」

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  • はじめに
  • 1 「生きづらさ」はどのように認識されるか
  • 2 共同性・拘束性・孤立

I 近世身分制社会の解体

  • 1 近世日本における身分制
  • 2 近世身分制の解体過程
  • 3 不安と競争一通俗道徳実践の全面化一

II 窮民のゆくえ

  • 1 明治期日本の救貧法制概観
  • 2 恤救規則の適用

Ⅲ 競争する「家」と再建される村

  • 1 「家」小経営と市場経済
  • 2 再建される相互監視
  • おわりに

I-2 近世身分制の解体過程

こうした社会状況のなかで,江戸幕府の倒壊を直接に引き起こしたのは,条約勅許問題に端を発する政局の混迷であった。そこでは,なんらかの統合理念が提示されるよりも.対立する勢力が互いに失敗を攻撃しあうこと,そして政局の行き詰まりをクーデタで清算することがくりかえされた。

I-3 不安と競争一通俗道徳実践の全面化一

 このように、新政府の改革はかならずしもプログラム化されていないにもかかわらず旧秩序を解体する性格のものであった。しかし, こうした政策は農村富裕層からは一定の支持を得た。彼らにとってそれは.村請制による強制的再分配からの解放を意味したからである。農村富裕層のあいだでは,再分配から,富の増大(勧業インフラ整備),知識の増大(教育)への政策転換支持が起きた。
 しかし.そうした政策転換を支える財源調達に政府は苦慮することになる。単にクーデタの勝者であるにすぎないという正統性の弱さゆえに政府は容易に増税ができず.むしろ1877年に地租率を3%から2.5%へ引き下げるという減税をおこなわざるをえなかった。農村富裕層は,旧秩序の破壊は支持するが増税は望まなかったのである。こうして、農村部では小さな政府のもとで.従来再分配機能を担ってきた村請制の村が解体される状況が生じた。村請制の村や.武士の身分を含む各種身分集団の解体は.それまでそうした集団に依拠して生きてきた人びとの不安の増大を招いた。
 近世後期から,部分的に浸透しはじめていた勤労と倹約という,安丸良夫のいう「通俗道徳」的実践が全面化するのはこの時期である安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』青木書店1974年,のち平凡社ライブラリー, 1999年)。近世における「通俗道徳」実践は,諸個人・諸経営にとっての一つのオプションであったと考えるべきであり.それ以外に不安定な社会を乗り切る選択肢が失われる段階が近代とともに到来したと位置づけられる。

つらい話すぎて逆にウケる。