今月の月刊松沢裕作です。
あとがきにて史料データセッション研究会への謝辞をいただいております。どうもありがとうございます。
日本近代村落の起源 - 岩波書店
第I部 村請制村落から近代村落へ──地租改正前後の変容
- 第一章 明治初期の村運営と村内小集落
- 第二章 村請制と堤外地
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第II部 地租改正の遂行過程──壬申地券発行・耕宅地・山林原野
- 第三章 壬申地券と村請制
- 第四章 地価決定の制度的問題
- 第五章 林野官民有区分の構造
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第Ⅲ部 相互監視の場としての村落の再建
- 第六章 官有地・御料地と無断開墾問題──富士山南麓の場合
- 第七章 明治中期の大字・行政村・町村組合
- 結論 日本近代村落の起源
- 索引
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序論
- 三村昌司『日本近代社会形成史:議定・政党・名望家』 東京大学出版会、2021年 ISBN:413026611X
- [005] 5 課題のパラフレーズ
「本書の課題は、村落という制度が、地租改正による村請制の解体と町村合併を経て、どのような変化を遂げ、近代社会の構造のなかにどのように組み込まれ、どのような機能を果たしたのかを明らかにすることである。近世の村と近代村落はいかなる関係にあるものとして位置づけられるのか。こうした作業を経なければ、明治17年に消滅が論じられた「村の美風」が、昭和19年には肯定的に、戦後には批判的に言及され続けるのか、理解することはできないはずである。」
- [007] 7 結論の事前提示
鈴木栄太郎の見解に反して、「本書が提起するのは、構成員や領域、そしてそこで営まれる農業のあり方の連続性にもかかわらず、この近代の大字なる単位は、近世の村とは異なった種類の集団であり、むしろ近世の村がいったん解体した後に、農村社会の住民たちによって、改めて作り直されるというプロセスを経て成立したものなのではないかという歴史像である。」
- [025] 序論末尾における書籍構成の提示:
- 第I部では、幕末から明治初期の村落を対象として、村請制解体=地租改正の前後で、村と村内の組、そして土地所有の仕組みがどのように変化するのかを検討する。解体時に何が変化したのかを観察することで、近世の村における村請制の規定性を浮かび上がらせる試みである。
- つづく第II部では、地租改正の実施過程に照準し、それが、政府の側のいかなる動機と、村落の側のいかなる事情によって遂行されたのかを明らかにする。このことによって、村落の変化と国家権力の様態が相互に規定しあうメカニズムを提示する。
- 第III部では、村請制の解体後に形成された行政村-大字関係を分析し、主として大字を単位に形成される村落秩序が、村請制村の解体と、新たな質の国家権力のもとで、住民によって創出されたものであったことを論じる。
以上の検討を経て、本書は、のちに「自然村」と呼ばれる結合のあり方が、決して遠い過去から所与の「自然」であったわけではなく、しかし一面では、確かに「自然発生的」なものであり、まさにそれゆえに、住民たち自身が作り上げたものであるにもかかわらず、「彼らの外部に自存する強制力」としてあらわれることを明らかにする。そうした「強制力」の具体的な顕れが、先に触れた、「万人による万人の監視の不快さ」ということになろう。