涜書:ラザーズフェルド『質的分析法』

1972年刊行(著者71才)。翻訳は1984年。
30年代から60年代にかけての自選論文集。

  • 序章

第1部 歴史的考察

  • 第1章 概念形成史小論
  • 第2章 行為の経験的研究に関する歴史的考察──ひとつの精神遍歴

第2部 批判的社会学

  • 第3章 批判の役割とマス・メディア
  • 第4章 コミュニケーションの行政管理的調査と批判的調査
  • 第5章 批判的理論と弁証法

第3部 質的調査の技法

  • 第6章 理由を聞き出す三原則
  • 第7章 動機調査における流行と発展
  • 第8章 社会調査における分類の諸原則

第4部 社会学と隣接科学

  • 第9章 科学哲学と経験的社会調査
  • 第10章 世論調査と古典的伝統

第5部 社会学社会学

序章

研究領域を
  1. 自然科学、
  2. 人文科学(歴史、文学、哲学)、
  3. 「法則追求的」社会科学
の三部門に分けると有用なことがある。「法則追求的」という言葉は経済学、心理学および社会学における最近の動向を検討したユネスコの委員会が使用したのを借用したものである。
16
かつて、ミルズと私の講義を受けた学生が以下の評言をしたことがある。
私の大好きな空想の一つは、ミルズとラザーズフェルドが対話をしており、前者が後者に『社会学的想像力』の第一文を読み上げる。「人々は、最近しばしば彼らの私生活に、一連の落とし穴が仕掛けられていると感じている」と。そこでラザーズフェルドはすかさず、「そのように感じている人は何人いるのか?それはどのような人たちで、どれぐらいの期間そのように感じているのか」とやり返す。
私は多分そのような数の勘定に末梢的な興味を持っていただろう。しかし、私が本当に聞きたかっただろうことは、それとは別の方向である。ミルズは何をもって「疎外された人」を意味しているのか。つまり彼はある人が他の人たちよりもっと疎外されているかどうか、どのような方法でその分類の決定をするのか。このような問題が解決できてはじめて人数の勘定が可能になるのである。たとえそれができたとしても、私はむしろ疎外の程度の違いを説明する生活歴や社会的要因を探索することのほうを選んだであろう。そして私がその調査を終える前に、質的技法のすべてを投入していただろう。