長岡克行(2012)「意思決定とは何をどうすることか」東京経済大学会誌 276 |
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第5節 結び──経営学における意思決定研究の課題
サイモン自身も『経営行動』の出版50周年に刊行された同書第4版の「第5 章のコメンタリー」で次のように述べていた。
「意思決定過程を記述するために,私は論理(諸前提から結論を引き出すこと)を中心的なメタファーとして用いたため,『経営行動』の読者の多くは,ここで提示された理論は,『論理的』な意思決定にのみ適用され,直感や判断を含む意思決定には適用されないという結論を下した。これは,全く私の意図するところではなかった。」(Simon 1997, p. 131. 邦訳204 頁。( )内もサイモン)
しかもこれは,最初期からサイモンの意図するところでなかった。彼は『経営行動』以外のところで,すでに1952年に,「意思決定は,諸前提から(何ら厳密に論理的な意味においてではないけれども)導き出される結論と見なされうる」(Simonn 1952, p. 1132)と書いていたし,その7年後の論文では,次のように述べていた。
「意思決定と論理的推論の類似は,比喩的でしかない。なぜなら,これら二つのが場合において,『妥当な』前提と推論が許される様式を構成するのは何であるかを決定する規則が,まったく異なるからである。」(Simon1959, p. 307)