ジェイムズ・マーチ(1963)「権力概念の有用性」

1966刊行物。プロパーな政治学者がイーストン一人しかいない、という異様な論文集。
『権力』(1975)の中でかなり参照されている。http://d.hatena.ne.jp/contractio/19750329

イーストンの序文によると(17):

これらの論文は、1963年9月にニューヨーク市で開催されたアメリ政治学会の年次大会における討論用ペーパーとして書かれたものである。この大会の政治理論部会の議長をつとめた私は、政治学の外で静かに発展している一般政治理論にたいする代替的なアプローチをいくつかまとめてみることが有益であろう、とふと思いついた。これらのペーパーを論議したこの政治理論部会の全体会議に異常に大勢の出席者があったことは、これらの理論的作業とその卓抜な代表者とによって惹起された関心の程を証明していた。

  • 序 「理論的研究における代替的戦略」 デイビッド・イーストン
  • 「政治研究-決定作成の枠組」 ハーバート・A・サイモン
  • 個人主義的アプローチによる政治過程論」 ジェイムズ・M・ブキャナン
  • 「権力概念の有用性」 ジェイムズ・G・マーチ
  • 「社会構造・過程の政治的側面」 タルコット・パーソンズ
  • 「構造的アプローチによる比較政治研究」 M・G・スミス
  • 「政治理論にたいする体系アプローチ」 アナトール・ラパポート
  • 「政治体系分析の範疇」 デイビッド・イーストン

序 「理論的研究における代替的戦略」 デイビッド・イーストン

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 長期的な歴史的視座からみると、このような理論的革命の貢献は、主として、いわゆる基礎的社会諸科学の序列における不動の地位を、政治学のために獲得してやることになるであろう。政治学は従来、必ずしもこのような不動の地位を占めるものとは考えられてこなかった。たとえば、つい最近まで、他の社会科学者たちは、社会科学の規制体制のなかで政治学が一体どこに位置しているのかについては、強い疑念を抱いていいただけではない。彼らは時には政治学を、他の社会科学が取得した基礎知識を応用する一学問領域に過ぎないとさえみなしたのである。つまり政治学は、彼らにとっては理論的知識の領域ではなく、むしろ応用的知識の領域なのであった。

13 こちらの方の問は面白いね。

だが、政治学と他の学問領域との統合は、政治学の方からのみ企てられたのではなかった。他の社会科学の研究者も、この統合過程の促進に寄与した。そしてここで、われわれは、科学年史上、類例をみない一つの現象に出くわしたのであり、その現象が本書の主題なのである。政治学領域外の社会科学者は、政治全体を概念化する新しい理論装置を発明しなければならない衝動を感じた。社会科学史がどのように書かれようとも、それが、政治学にたいする隣接諸分野からの、このような理論モデルの流入の異常さを解き明かすことは疑問の余地がない。本書に収められた諸論文が十分証明しているように、なかんずく社会学者、経済学者、人類学者たちは、高水準の理論的一般性において政治現象の研究を体系化することに彼らの技能をふりむけたのである。
 政治学が独力でなすのに緩慢であったことを、なぜ他の社会科学者が政治学のためになるような衝動を感じたのか。

ジェイムズ・マーチ「権力概念の有用性」

118「本論文は、1963年アメリ政治学会年次大会に提出された最優秀論文として、アメリ政治学会パイ・シグマ・アルファ賞を受賞した──編者注」

  • 一 序
  • 二 権力研究における三つのアプローチ
    • 1 実験研究: 概念的基礎/方法/結果
    • 2 地域社会研究: 概念的基礎/方法/結果
    • 3 制度研究: 概念的基礎/方法/結果
  • 三 六つの社会的選択モデルと権力の概念
    • 1 偶然モデル: 無拘束モデル/権力均等モデル/遭遇モデル
    • 2 基礎実力モデル: 連続ケース/確率的二値ケース/ほぼ確定的な二値ケース
    • 3 実力活性化モデル: 分割モデル/連続モデル
    • 4 実力条件づけモデル
    • 5 実力消耗モデル
    • 6 過程モデル: 交換モデル/課題解決モデル/伝達=伝播モデル/決定作成モデル
  • 四 権力概念の有用性: 
    • 誘惑1「権力の明白性」
    • 誘惑2「測定の重要性」
    • 誘惑3「残差分散」