朝のお仕事用。
ゲオルク・ジンメルと社会学 (SEKAISHISO SEMINAR)
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II ジンメルの思想と論理 |
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II ジンメルの思想と論理 |
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哲学者ジンメルが社会に関心を向けるのは、倫理学的「個人関心」と社会的現実主義を彼が接合しようとしていたからである。つまり彼は倫理学的関心、特に個人の質と人間としての運命、ならびにその人格的自由と歓声の問題を社会的現実を媒介にして考えようとしていたのである。
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『社会的世界の意味構成』[1932]におけるシュッツは、なぜかこの彼の問題設定にはより生産的であったのではないかとも思えるジンメルではなく、ウェーバーの理解社会学のほうに準拠した。
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ジンメルを現象学的社会学や象徴的相互作用説に翻案しなおすというこのような課題ともかかわって、ジンメルの社会学的議論を「日常」世界の現象学と総称する見解も、今日大変流行している関心の一つである。もっともこの見解は、漠然と流布しているイメージ的レベルにとどまるものであって、読むにたえるだけの論証をともなった議論はじつは皆無に近い状態である。
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ジンメルにおける「人間の経験の質」への基盤的問いを、なんとよんだらよいのであろうか。私自身は、当時の文化概念が一方で社会と文明への対抗概念であったことを考えると、人間への社会学的問いをも含みこんだジンメルの思想全体に「文化科学」というタームを適用することの有効性に若干懐疑的である。それよりは、社会と文化の概念とそれへの問いのさらに根底にある、しかもドイツ歴史学派において当時馴染みの概念であり、G・シュモラーの弟子でもあったジンメル自身も何度か使ったことのある「人間の(科)学」というタームのほうがこの基盤的問いの形容としてはより有効なのではないかというのが私の年来の見解である。