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1984年。ドレイファス&ラビノウ『ミシェル・フーコー―構造主義と解釈学を超えて』(1983)に収められた フーコーへのインタビュー「倫理の系譜学について」(1982)の書評。
『ミシェル・フーコー思考集成〈9〉自己・統治性・快楽』にも所収。
「倫理の系譜学」というインタビューの題名にどれほどの含みがあるのか私には分からない。が、もちろんそこにはニーチェの『道徳の系譜』を想わせる響きがある。ここでの道徳(moral)と倫理(ethics)の対比を真剣に受け止めるべきだろうか。ニーチェが用いたのはドイツ語の Moral である。一方でカントの『人倫の形而上学』に使われているのは Sitte であり、われわれはこれを倫理(ethics)と訳している。そしてこの対比は、フーコーの関心にぴたりと合う。彼は Moral ではなく、Sitte について書いていたのだ。ドイツ語の Sitte は道徳だけでなく、習慣や慣習をも意味する。そうした習慣や慣習にこそ、フーコーは心奪われていたのである。[244]