ついふらふらと新しい(しかも古い)本を買ってしまった。いまは反省している。
嗜癖というものはそんなに簡単に治まるものではありません。
- 作者: 小倉千加子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1994/12
- メディア: 文庫
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歳月を隔てて読むと、「透徹」と形容するにふさわしい議論をされておられることがわかります。すげー
というか読んじゃった(泣。 息抜きです すみませんすみません。
■短大生の選択肢が(すく)ない件
小学校の先生になるのは勉強量が多くてたいへんてだけじゃなくて 試験が難しくてまず受からない。(中略)。では保育園の先生は!?
幼稚園の教員になれる子というのは、どういう子かというと、
- まず、成績がいい。
- それからピアノが弾ける。
- 美術の才能もある。
- 字が上手。
- 働くときに骨惜しみをしない。
- 美人。
- スタイルがよくて、
- 教育への使命感に燃えていて、
- 経営者には従順で
- 体力があって
- 忍耐力に富む子。
これだけ十一の条件を充たしているとなれます。[p.129(改行およびナンバリングは引用者)]
それは天使です。
学生たちは、友達が幼稚園の先生を受けに行って受かったというのを聞きますと、「あの子は偉いな」──皮肉が半分はいっているんです。あんなえらい[〜たいへんな]仕事によくつくなということも入っているんですが──「あの子にしかできない」という言いかたもするわけです。半分は本当に偉いなと思っているんですよ。自分は受けにいっても受からない。だから、そういう職業を真の労働だと思っているんです。私らはどうせOLやし、と思っているわけです。本当はOLになるために生まれてきたわけじゃない。人にできないようなことを自分でもやってみたい。でもそんな才能はないし、努力するのはいやだ。幼稚園の先生もいいとは思うけど「私、そんなにエラくないし……」結局OLしか残ってないんです。[p.130]
■白雪姫は結婚して「白雪姫の母」に、シンデレラは結婚して「シンデレラの母」になる(そして話は永久に続いていく)件:
原作では白雪姫もシンデレラも継母ではなくて実母です。ところが継母に変えられてしまっている。実の母が実の娘にああいうむごい仕打ちをするのは制度にとって都合がわるいというので、継母に変えてしまったのでしょう。[…]
実の母が娘をああいうむごい仕打ちにあわせることはよくあります。皆さん方は、自分が娘の立場になって自分のお母さんのことを思ったら、いろいろつらい目にあわされていることを思い起こせるはずです。どうしてうちの母は娘に対してああいう無理解なことを言うんだろう、どうしてああ愚痴っぽく、いつもまわりの人をウンザリさせるんだろう、どうしてああ嘘つきなんだろう......自分が娘の立場になってみたらみんな心当たりがある。ところが自分が娘を産むと、私は母としてきちんとやってるというふうに思うわけです[…]。
娘だけが母親の欺瞞性あるいは偽善性を指摘できるんですけれども、「やっぱり、見破られたのね。私もそうかなと思って悩んでた」ときちんと反省する母は絶対にいない。[p.177-178]
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■お母さん
人生すごろく、ラスト。
■せめて娘を女らしく
宗教、アルコール、恋愛という、主婦の今日的な逃避方法にも走れない、外にもいけない主婦は何をするかというと、ひたすら娘をいじめます。いじめているつもりはないんです。本人は娘のため、と思って実は娘をいじめてる。たとえば門限を決める。早く結婚しなさいとお尻をたたく。そういう方法です。娘というのは自分のいちばん身近にいる同性です。だから娘をより女らしい生き方の中に押し込めていこうとするんです。
女らしい生き方の本質は何かというと、自分のことは我慢して人のために尽くしてあげるということです。人のお世話をするということです。今は娘はぜんぜん女らしくない。わがままだ。しかし娘が、私が口うるさく言うことによって女らしくなって、ちゃんと一人前の女らしい女になったら、娘は自分のわがままを抑えて人のためにお世話をする。そのとき私のお世話もしてくれる、ということです。「私は寂しい」「私をなんとかして!」「毎日毎日ご飯を作る生活はいやだ」と夫に言ったって聞く耳を持たない。息子に言ったって聞く耳を持たない。でも娘だけはわかってくれるかもしれない。「お母さん、そんなしんどいことやめて。私がかわりにやってあげるからね」というふうな娘に仕立てるためには、娘を女らしい娘にしなければならないんです。
だから、お母さんは娘に「私を愛してくれ」と言っているんです。[…] 娘の私生活に過度に干渉する母親[…]、これは[…]いちばん身近な人間を痛めつけることによって自分を愛してくれと絶叫している存在です。[p.218-219]
女の一生、これが「あがり」です♪