活字でかっ
- 作者: 本山ちさと
- 出版社/メーカー: 学陽書房
- 発売日: 1998/05
- メディア: 文庫
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- オキテ1 知らない顔は警戒すること
- オキテ2 新入りは下手に出ること
- オキテ3 何でもまわりに合わせること
- オキテ4 ケンカをしないこと
- オキテ5 悪口を言わないこと [p.130-131]
オキテ3──何でもまわりにあわせること
「おたくはどうするの? チコちゃん来年数え年でやる?それとも満三歳でやる? よかったら、ウチのこの三歳のときの衣装、貸してあげるけど」
「えっ? うちは、そのう、やらないつもりだんだけど、七五三……」
しかたなく正直に答えると、
「やらない? だめよ、そんなの! 子供がかわいそうじゃない。今はよくても、小学生くらいになったら、よそで写真見たりして、どうしてうちには七五三の写真ないのって絶対言い出すんだから。子供って、そういうものよ」
すごいけんまくだった。[p.98]
「子供がかわいそう」は、ハハ族の葵の御紋だ。仲間内でひとりだけ違うことを言ったり、したりすると、「子供がかわいそう」という葵の御紋をパッと出される。言われた方の母親は、これを持ち出されると、ハハァとひれふさないまでも、思わずひるんで、反論の意気をそがれてしまう。[p.101]
勉強になる。
以後、[かわいそうメソッド] と呼ぶことにしよう。
オキテ5──悪口を言わないこと
「悪口を言わないこと」というオキテがあるから、はっきり悪口だとはみなされないように、ハハ族はもってまわった言い方をする。
ひとつは個人名をゼッタイ出さず、「あるお母さん」と匿名にする言い方。「ああ、あの人かな」とはっきりわかっても、「それって○○さんのこと?」と質問しないのがハハ族流の礼儀作法だ。
もうひとつは、ハハ族流ほめ殺し。乱暴者は「元気なお子さん」、ナマイキな子は「はっきりしたお子さん」、わがままな子は「マイペースなお子さん」、ちゃっかり者は「しっかりしたお子さん」とお上品に言い換える。
母親についても、子供の管理不行き届きな母は「のんびりしたお母さん」、教育ママは「熱心なお母さん」という具合である。[p.117-118]
...このあとは、職場のナカヨシどうしが、赤ちょうちんでおでんでもつつきながら、職場のグチや悪口をおしゃべりしているノリで、あっというまに時間が過ぎてしまった。[...]
あわてて立ち上がったとたん、私はふと我に返った。[...]
「あのう、悪口言っちゃってまずくないのかな」
突然やってきた不安を口にすると、彼女は豪快に言い放った。
「まずくないよ。最後は、でも みーんないい人よね、で終われば。私たちも、たまにはスカッとしなくちゃ。いろいろ言っちゃったけど、ほんとにみんないい人たちよね!」[p.121-122]
こちらは [いい人メソッド]。
[いつか使う]