市野川「医療倫理の歴史的変遷...」「近代医学と死の医療化(上)」

イッチー既公刊論文を俺が(ほぼ)公表順に読むスレ。

  • 市野川容孝(1997)
    「医療倫理の歴史的変遷と死の定義」
    (特集 脳死・臓器移植が問うもの)
    看護学雑誌 61(10)、
    p.936〜940
    1997/10 (ISSN:03869830) 医学書
  • 市野川容孝(1997)
    「近代医学と死の医療化(上)」
    『思想』878
    p.101-120
    1997/08、岩波書店
  1. ヒポクラテスの誓い 
  2. 前史(予備的考察)
  3. 啓蒙主義の医療倫理
  4. 死の医療化
  5. ビシャ

前者は後者の縮約版、かな。


マリノフスキー偉かった

「近代医学と死の医療化(上)」p.105

 そしてマリノフスキーは、メラネシア人の病気観に見られるそうした二重構造を いわば鏡としながら、次のように問いかける。メラネシアでは

ある老人が死に瀕している場合、共同体の他のメンバーはそれが自然な原因によるものだと考える一方で、当の老人は呪術のことだけを機に書け、目前にある死が自然な運命であるとは全く考えないのである。重病の人は自分の病気の原因を呪術に求めるが、その一方で、他のすべての者はビンロウジュの実を食べすぎたんだろうとか、何か不摂生をしたんだろうと言う。しかし、われわれのうちの誰が、自分の身体的な欠陥や、迫りくる死は純粋に自然な現象、無限の因果連鎖の中の取るに足らない一つの出来事だと本気で考えているだろうか。分名人の中でも最も合理的な人でさえ、健康や病や死の脅威のことを考えるとき、感情的になり、はっきりとした答えを出せなくなる。そして、これらが避けがたい運命として身に迫ってくればくるほど、謎はますます深まり、答えを見いだすことは難しくなるのである(Malinowski 1954, p32)。

Magic, Science and Religion and Other Essays

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