外延的定義・僥倖・外挿:その2

承前:id:contractio:20091219#p1

続き:id:contractio:20091221#p1

このエントリでは、まとめ1817 のうちの id:inflorescenciaさんによる [20:38:57] を中心に、trickenさん(id:gginc)とinf.さんとのやりとりを取り上げる。

[2-0]

はじめに、ごくトリヴィアルなことを確認しておきたい。

とはいうものの、このシリーズにおいて、私はトリヴィアルな指摘以外のことを書くつもりはないのだが。

私たちは、まとめ1817 をみて、「やりとりがおこなわれている」と読むことが出来てしまう。そして、まとめがそれなりの「まとまり」を持っているようにも読めてしまう。そのように「わかってしまう」のは、私だけではない。なにしろ、このまとめは第三者id:massunnkさん)が作成したものなのだから。
 そして、やりとりの参与者たちにも それがわかっていることは やりとりをみればわかる。たとえば [00:16:49] 付近では、このやりとりを終息に向かわせる手続きが見て取れる。つまり、

  • [00:16:49] で、「ぐない」とポストした inf.さんも、
    それに対して
  • [00:20:43] で、「へとへとでございました.できれば今度は」〜と返した trickenさんも

このやりとりのまとまりが「わかって」いることはみてわかる。それだけでなく、id:massunnkさんも そうしたあれこれを資源として「まとめ」を作成したのだし、そしてまたそれを読む私たちも 同じことを利用して、ここで やりとりに終結のアクセントが加えられていることがわかってしまっている。

 やりとりのまとまりが、「正確には」どこまでなのかについては、異論の余地があるかもしれない。しかし、やり取りの参加者たちが いったん席を離れて別のことを開始したり、このまとめを参照してさらに 1953 のような議論を進めることが出来るくらいには、やりとりのまとまりは「ちゃんと」わかる。

もしもこのやりとりが「本当には成立していない」と述べるなら、その際には「いったいなぜ、id:masmtさんは「まとめ」を作成することができたのか」とか、それ以前にそもそも、「いったいなぜ inf.さんは [00:16:49] のあとで 就寝ほかの活動に向かうことができたのか」についての 特別な説明 が必要になってしまう。
[2-1] 誤解
  • @tricken ルーマン

    inflorescencia
    2009-12-14 19:34:02
  • @inflorescencia 特にルーマンだけに依拠したというわけでもないです.あと,人が対話において何をどれだけリソースとして用いているのかというのはまだ自分の手に余る問題.

    tricken
    2009-12-14 19:44:54
  • シンボリック相互作用論やエスノメソドロジーでも似たような帰結が出てくるのではなかろうか,と思っているので,観察の仕方,その精度の問題になるのでは無いかと思う.

    tricken
    2009-12-14 19:49:00
  • @tricken ああ、そうでしたか。 / ところで私が「ルーマン?」とだけポストしたのに、trickenさんが自身の議論の依拠するところを聞かれたという意味を引き当てられたのはどうしてだと思います?

    inflorescencia
    2009-12-14 20:38:57
  • @inflorescencia んー,むしろ「依拠しているから自明だ」と言ってるわけじゃないよ,という振る舞いをせざるを得なかったのですね.

    tricken
    2009-12-14 20:44:28
  • @tricken 「ある振る舞いをせざるを得なくなった」というのは、選択肢が狭められたと判断したということだと思いますが、その判断にはどのような前提があったのでしょうか?

    inflorescencia
    2009-12-14 20:53:48
  • @inflorescencia 先ほど言った通り,“ルーマンの”コミュニケーションのことを言っている,と解釈されても,そこで想起される具体的対応物に対して自分が責任を持ち切ることはできないためですよ.

    tricken
    2009-12-14 20:59:06
  • @tricken 私が聞きたいのは、「“ルーマンの”コミュニケーションのことを言っている,と解釈されて」ると解釈したのはなぜか、ということです。どのように想起される具体的対応物を想定しましたか?

    inflorescencia
    2009-12-14 21:01:49
  • @inflorescencia 「理解/言語」「現前/メディア」「成功/象徴的に一般化されたメディア(SGM)」の三分類で言われるようなコミュニケーションモデルのことを念頭に置きましたよ.それに厳密に対応づけて話をしたわけではなかった.

    tricken
    2009-12-14 21:09:51
  • @inflorescencia それともルーマン「のコミュニケーション」ではない話のところに着目したかったのに,自分が早合点して出ばなをくじいてしまった?

    tricken
    2009-12-14 21:14:45

さて。ここで生じていることが見て取れる誤解について簡単に確認しておこう。


[19:44:54] には、直前の inf.さんのポストルーマン?」が、

  • 【Q_inf1:あなたのその主張は ルーマンに依拠したものか?】

といった趣旨の問いかけ であると受け取られたことが見て取れる。
それを受けて=踏まえて、次に inf.さんが問うているのは([20:38:57])

  • 【Q_infb:[19:34:02] のポストが、特定の趣旨【inf.Qa】を持つ問いかけだとわかってしまったのはなぜか】

ということであるように読める。
ところが trickenさんの返答は、こうであった:

  • [20:59:06] ルーマンの”コミュニケーションのことを言っている,と解釈されても,そこで想起される具体的対応物に対して自分が責任を持ち切ることはできないためですよ.

これは、

  • 問い【Q_inf1】に対する最初の答え「特にルーマンだけに依拠したというわけでもない」を敷衍しようとしている

ように読める。つまり、【Q_inf1】 への回答ではあっても、【Q_inf2】([20:38:57])に対する答えにはならない。


 この誤解は、このやりとりの最後まで、解かれたかどうかあやしいままなのであるが*、しかしそれでもやりとりは進んでいく。

* たとえば、やりとりの終わり付近では、こういわれている。
  • [00:20:43] できれば今度は(せめて1月まで)30分くらいで返答できるものをよろしくお願いしますorz
けれども、すぐ次に述べるように、このやりとりが長引いたのは、上記の誤解のせいだろう。

 というか、以降のやりとりは、「ここで理解が達成されたか否か-の-不明確さ」を資源にして進んでいく、という言い方も出来る。というのは、inf.さんは、当初の問いかけが理解されていない可能性を見て取って、部分的な質問をいくつも重ねることによって、自分の「聞きたいこと」を聞き出そうとし始めるからである。

これが、このやりとりが長引いた理由であるように思われる。

他方、Trickenさんのほうもみずからの誤解(or 無理解)の可能性を勘案していることが、[21:14:45] 以降何度か明示的に表明されている。

ex.
  • 「自分が早合点して」 [21:14:45]
  • 「すみません,何を問題にしようとしているのか」 [21:37:06]
  • 「どうしてそれに興味を持つのですか?」 [22:10:35]
  • 「そもそもいまだに今回,その返答がinf.さんの予期に対して適切だったのかすら判断できてないです」 [00:16:52]


 つまり、このやりとりは、「ひとは「誤解をはらんだやりとり」をどのように進めるのか」ということの ひとつの事例になっているわけである。

[2-2] 見て言えること

このやりとりを見て、ほぼ推論なしに言えるトリヴィアルなことを、さらにいくつか指摘しておく。


〔書きかけです〕